歯磨き粉の研磨剤は歯に悪い?メリット・デメリットと正しい選び方

こんにちは。医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科の理事長の尾立卓弥です。札幌で矯正歯科を検討中の方は、ぜひ医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科でご相談ください。歯磨き粉の研磨剤は歯を傷つけると聞き、使うのが不安な方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、研磨剤は正しく使えば歯に悪いものではありません。この記事では、研磨剤の役割やメリット・デメリットを徹底解説します。着色汚れや知覚過敏など、あなたの悩みに合わせた歯磨き粉の選び方から、歯を傷つけない正しい磨き方までわかるので、自分に合った一本で健康的で白い歯を目指せます。
1. 結論 歯磨き粉の研磨剤は正しく使えば歯に悪くない
「歯磨き粉の研磨剤は歯を削ってしまうのでは?」「歯に悪い影響はないの?」といった不安をお持ちの方は少なくないでしょう。毎日口に入れるものだからこそ、安全性は気になりますよね。結論から言うと、歯磨き粉に配合されている研磨剤は、正しい知識を持って適切な使い方をすれば、歯にとって決して悪いものではありません。むしろ、歯の健康と美しさを保つ上で重要な役割を担っています。この章では、まず研磨剤の基本的な知識と安全性について解説します。
1.1 そもそも歯磨き粉の研磨剤(清掃剤)とは?
歯磨き粉の研磨剤とは、歯の表面に付着した汚れを物理的に除去するために配合されている微細な粒子のことです。 成分表示では「清掃剤」と表記されることが一般的です。 この清掃剤の働きによって、ブラッシングだけでは落としきれない頑固な汚れを効率的に取り除くことができます。
主な成分としては、以下のようなものが挙げられます。 これらは歯の表面を傷つけすぎることなく、汚れを落とすために粒子のかたさや大きさが調整されています。
| 主な成分名 | 特徴 |
|---|---|
| 無水ケイ酸(シリカ) | 多くの歯磨き粉に用いられる主要な清掃剤。 粒子が細かく、適度な研磨力を持つ。 |
| リン酸水素カルシウム | 歯の主成分に近い性質を持ち、再石灰化を助ける働きも期待される、歯に優しい清掃剤。 |
| 水酸化アルミニウム | 比較的穏やかな研磨作用を持ち、歯の表面を滑らかにする効果がある。 |
| 炭酸カルシウム | 古くから利用されている清掃剤で、汚れを除去する効果が高い。 |
1.2 研磨剤の役割は歯の汚れを物理的に除去すること
研磨剤の最も重要な役割は、歯の表面に付着した歯垢(プラーク)や着色汚れ(ステイン)を、ブラッシングによって物理的にこすり落とすことです。 例えるなら、消しゴムで文字を消すように、歯の表面の汚れを粒子で絡め取って除去します。これにより、歯ブラシの毛先だけでは届きにくい、歯の表面の微細な凹凸に入り込んだ着色汚れや歯垢を効率的に除去し、歯本来の白さに近づける効果が期待できます。
1.3 日本の歯磨き粉の研磨剤は安全基準を満たしている
日本国内で市販されている歯磨き粉の多くは「医薬部外品」に分類され、厚生労働省が定めた製造販売承認基準に基づいて開発されています。 安全性には十分な配慮がなされており、配合できる成分や量も厳しく管理されています。
さらに、歯磨き粉の研磨性については、ISO(国際標準化機構)によって定められた国際規格が存在します。 この規格では「相対的象牙質摩耗度(RDA値)」という指標が用いられ、歯を傷つけすぎないための基準値が設けられています。 日本で販売されているほとんどの製品は、この国際基準を満たしており、通常のブラッシングで歯が過剰に削れたり、健康を害したりする心配は極めて低いと言えるでしょう。 安心して日々のオーラルケアにお使いいただけます。
2. 歯磨き粉に研磨剤が配合されるメリット
歯磨き粉に配合されている研磨剤(成分表示では「清掃剤」と表記されることが多い)は、適切に使用すれば多くのメリットをもたらし、お口の健康維持に重要な役割を果たします。単に汚れを削り落とすだけでなく、虫歯や歯周病の予防にも貢献するのです。ここでは、研磨剤がもたらす3つの主なメリットを詳しく解説します。
2.1 メリット1 歯の着色汚れ(ステイン)を落とす
コーヒー、お茶、赤ワインに含まれるタンニンや、タバコのヤニなどは、歯の表面に付着して着色汚れ(ステイン)となります。 このステインは、通常のブラッシングだけではなかなか落としきれません。研磨剤は、その物理的な力で歯の表面に固着したステインを効果的に剥がし取り、歯が本来持つ自然な白さに近づける効果が期待できます。
ただし、これは歯そのものを白くする「ホワイトニング(漂白)」とは異なり、あくまで表面の汚れを取り除くことによる作用です。 研磨剤によってステインを除去することで、見た目の印象を明るく清潔に保つことができます。
2.2 メリット2 歯垢(プラーク)を効率的に除去する
虫歯や歯周病の直接的な原因となるのが、細菌の塊である歯垢(プラーク)です。 歯垢は粘着性が高く、歯の表面や歯と歯茎の境目にしっかりと付着しています。歯ブラシだけでもある程度の歯垢は除去できますが、研磨剤が配合された歯磨き粉を使うことで、歯ブラシが届きにくい歯の表面の微細な凹凸に入り込んだ歯垢まで、効率的にかき出すことができます。
研磨剤の粒子が歯垢を物理的にこすり落とすことで、ブラッシングの効果を高め、虫歯や歯周病のリスクを低減させることに繋がるのです。
2.3 メリット3 歯の表面をツルツルにし汚れの再付着を防ぐ
研磨剤で歯を磨くと、歯の表面がツルツルになるのを感じるでしょう。これは、研磨剤がエナメル質の表面にある目に見えないミクロレベルの傷や凹凸を滑らかに整える効果があるためです。 歯の表面が滑らかになることで、舌触りが良くなるだけでなく、ステインや歯垢といった汚れが再び付着しにくくなるという予防的なメリットも生まれます。
このように、研磨剤は単に「落とす」だけでなく、その後の「付きにくくする」という点でも口腔環境を清潔に保つために役立ちます。
| メリット | 具体的な効果 |
|---|---|
| 着色汚れ(ステイン)の除去 | コーヒー、お茶、タバコのヤニなどによる歯の黄ばみを落とし、歯本来の白さに近づける。 |
| 歯垢(プラーク)除去の効率化 | 粘着性の高い歯垢を物理的にこすり落とし、虫歯や歯周病の予防効果を高める。 |
| 汚れの再付着防止 | 歯の表面を滑らかにすることで、ステインや歯垢が付着しにくい状態を保つ。 |
3. 歯磨き粉の研磨剤は歯に悪い?考えられるデメリット
歯の汚れを効率的に落としてくれる研磨剤ですが、使い方や選び方を間違えると、歯や歯茎にダメージを与えてしまう可能性があります。ここでは、研磨剤によって起こりうる3つのデメリットを詳しく解説します。
3.1 デメリット1 歯のエナメル質を傷つける可能性がある
研磨剤の最も大きなデメリットとして、歯の表面を覆うエナメル質を傷つけてしまう可能性が挙げられます。 特に、研磨性の高い歯磨き粉を使ってゴシゴシと強い力で磨く習慣があると、歯の表面が徐々に削られてしまう「歯の摩耗」を引き起こすことがあります。エナメル質が削れると、その下の象牙質が露出し、見た目が黄色っぽく見える原因にもなります。
また、歯と歯茎の境目部分がくさびのように削れてしまう「くさび状欠損」も、過度なブラッシング圧と研磨剤の影響が原因の一つと考えられています。一度削れてしまったエナメル質は、自然に元に戻ることはありません。そのため、力の入れすぎには十分な注意が必要です。
3.2 デメリット2 知覚過敏を悪化させるリスク
エナメル質が削られて象牙質が露出すると、外部からの刺激が歯の神経に伝わりやすくなります。 これが、冷たいものや熱いもの、歯ブラシの毛先が触れた時などに歯が「しみる」と感じる知覚過敏の主な原因です。
すでに知覚過敏の症状がある方が研磨性の高い歯磨き粉を使い続けると、症状が悪化してしまうリスクがあります。 ホワイトニング効果を謳う歯磨き粉の中には、着色汚れを落とすために研磨剤が多く含まれている傾向があるため、知覚過敏が気になる方は成分をよく確認することが大切です。
3.3 デメリット3 歯茎やインプラントを傷つけることも
研磨剤の影響は、歯だけでなく歯茎や歯科治療で入れた人工歯に及ぶこともあります。
3.3.1 歯茎への影響
水に溶けにくい性質を持つ研磨剤の粒子が、歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)に入り込んでしまうと、歯茎に炎症を起こす原因となる可能性があります。 歯磨きの後は、研磨剤の粒子が口の中に残らないよう、しっかりと口をゆすぐことが重要です。
3.3.2 インプラントや被せ物への影響
インプラントの上部構造(人工歯)や、セラミック、コンポジットレジン(歯科用プラスチック)といった詰め物・被せ物は、天然の歯とは材質が異なります。製品によっては研磨剤によって表面に細かい傷がつき、ツヤが失われたり、汚れが再付着しやすくなったりすることがあるため注意が必要です。 特にインプラントはデリケートなため、低研磨タイプや研磨剤無配合の歯磨き粉を選ぶことが推奨されています。
| 歯科材料の種類 | 研磨剤による主な影響 |
|---|---|
| インプラント(上部構造) | 材質により表面に傷がつき、細菌が付着しやすくなる可能性がある。 |
| セラミック | 表面の滑沢性が失われ、光沢がなくなったり、着色しやすくなったりすることがある。 |
| コンポジットレジン | 摩耗が進みやすく、変色の原因となることがある。 |
4. 【目的別】研磨剤に着目した歯磨き粉の選び方
歯磨き粉を選ぶ際、研磨剤(清掃剤)の有無や種類は非常に重要なポイントです。すべての人に同じ歯磨き粉が合うわけではありません。ご自身の歯や歯茎の状態、そして目的に合わせて最適な一本を見つけることが、健康な口腔環境を保つための第一歩です。
ここでは、「着色汚れが気になる」「知覚過敏で歯がしみる」といった代表的なお悩みや状況に合わせて、研磨剤に注目した歯磨き粉の選び方を詳しく解説します。
4.1 着色汚れが気になる人は研磨剤配合の歯磨き粉を選ぶ
日常的にコーヒーやお茶、赤ワインなどをよく飲む方や、喫煙によるヤニ汚れが気になる方は、研磨剤が配合された歯磨き粉がおすすめです。研磨剤の物理的な力で、歯の表面に付着した頑固な着色汚れ(ステイン)を効果的に除去し、歯本来の白さに近づける効果が期待できます。
ホワイトニング効果を謳う歯磨き粉の多くには、ステイン除去を目的として研磨剤が含まれています。 成分表示では「清掃剤」として「無水ケイ酸」「炭酸カルシウム」「リン酸水素カルシウム」などが記載されています。 これらの成分が、歯の表面を傷つけにくい微細な粒子で汚れを削り落とします。
さらに高いホワイトニング効果を求める場合は、研磨剤に加えて、以下のような化学的にステインを浮かせて除去する成分が配合されている製品を選ぶと良いでしょう。
- ポリエチレングリコール(PEG):タバコのヤニを溶かす効果が期待できます。
- ポリリン酸ナトリウム(TPP):歯の表面からステインを浮かび上がらせ、再付着を防ぐ効果があります。
ただし、研磨剤による過度なブラッシングは歯のエナメル質を傷つける可能性があるため、力を入れすぎず優しく磨くことが重要です。 毎日の使用が気になる方は、週に数回のスペシャルケアとして取り入れるのも一つの方法です。
4.2 知覚過敏や歯が弱い人は低研磨・研磨剤なしの歯磨き粉を選ぶ
冷たい飲み物や歯ブラシの毛先が触れた時に歯が「キーン」としみる知覚過敏の症状がある方は、研磨剤が含まれていない(無配合)、あるいは配合量が少ない「低研磨」タイプの歯磨き粉を選びましょう。 研磨剤によって歯の表面が削られると、外部からの刺激が神経に伝わりやすくなり、知覚過敏の症状が悪化する可能性があるためです。
特に、歯茎が下がり象牙質が露出している場合、柔らかい象牙質はエナメル質よりも傷つきやすいため、研磨剤の刺激は避けるべきです。 ジェルタイプの歯磨き粉は研磨剤無配合の製品が多く、おすすめです。
知覚過敏の方向けの歯磨き粉を選ぶ際は、研磨剤の有無とあわせて、症状を緩和する以下の薬用成分が含まれているかを確認することが大切です。
| お悩み | 推奨される歯磨き粉 | 注目したい薬用成分 |
|---|---|---|
| 知覚過敏 | 低研磨・研磨剤なし | 硝酸カリウム:神経への刺激伝達をブロックします。 乳酸アルミニウム:刺激が伝わる象牙細管を封鎖します。 |
| 歯周病も気になる | 低研磨・研磨剤なし | IPMP(イソプロピルメチルフェノール):歯周病菌を殺菌します。 トラネキサム酸:歯茎の炎症や出血を抑えます。 |
成分表示を確認し、「研磨剤フリー」「無研磨ジェル」といった記載のある製品や、知覚過敏ケアに特化した製品を選んで、歯と歯茎を優しくケアしましょう。
4.3 電動歯ブラシには低研磨タイプがおすすめ
電動歯ブラシを使用している方は、「低研磨性」または「研磨剤無配合(フリー)」の歯磨き粉を選ぶことが推奨されます。 電動歯ブラシは、手磨きよりも高速な振動や回転によって高い清掃力を発揮します。そのため、研磨剤が多く含まれる歯磨き粉を併用すると、歯の表面や歯茎を過度に摩耗させてしまうリスクが高まります。
特に、ホワイトニング効果を謳う研磨剤が多く含まれた歯磨き粉との併用は注意が必要です。電動歯ブラシのパワーと研磨剤の作用が合わさることで、エナメル質を傷つけ、かえって着色しやすい歯になったり、知覚過敏を引き起こしたりする可能性があります。
また、電動歯ブラシには発泡剤が少ないジェルタイプの歯磨き粉も適しています。 泡立ちが少ないため、口の中が泡だらけにならず、磨いている部分をしっかりと確認しながら丁寧にブラッシングできます。 「電動歯ブラシ用」と記載のある製品も市販されているため、それらを選ぶのも良いでしょう。
4.4 子供用の歯磨き粉選びのポイント
子供の歯、特に生え変わったばかりの永久歯は、大人の歯に比べてエナメル質が柔らかく未成熟なため、非常にデリケートです。そのため、子供用の歯磨き粉は、研磨剤不使用か、配合量の少ない低研磨性のものを選ぶのが基本です。
子供の歯磨き粉選びで最も重要なのは、虫歯予防に効果的な「フッ素(フッ化物)」の濃度です。年齢に応じて推奨されるフッ素濃度が異なるため、以下の表を目安にお子様に合ったものを選んであげましょう。
| 年齢 | 推奨フッ素濃度 | 研磨剤 | 歯磨き粉の量 |
|---|---|---|---|
| 6ヶ月~2歳 | 500ppm | 不使用 | 切った爪程度の少量 |
| 3歳~5歳 | 500ppm~1000ppm | 不使用または低研磨 | 5mm程度 |
| 6歳~14歳 | 1000ppm | 低研磨 | 1cm程度 |
出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)「フッ化物配合歯磨剤」を参考に作成
また、子供が歯磨きを嫌がらないように、辛味の少ないフルーツ風味などの香味を選ぶことも大切です。うがいが上手にできない小さなお子様には、発泡剤無配合のジェルタイプや、飲み込んでも安全な食品使用成分で作られた歯磨き粉を選ぶとより安心です。
5. 研磨剤で歯を傷つけないための正しい歯磨き方法
歯磨き粉に配合されている研磨剤は、正しく使えば着色汚れや歯垢の除去に効果的です。しかし、使い方を誤ると歯や歯茎を傷つけてしまう可能性があります。ここでは、研磨剤のメリットを活かしつつ、デメリットを最小限に抑えるための正しい歯磨き方法を詳しく解説します。
5.1 力を入れすぎず優しい力で磨く
「ゴシゴシ」と音を立てて力強く磨くと、汚れがよく落ちるように感じるかもしれませんが、これは大きな誤解です。強すぎるブラッシングは、歯の表面にあるエナメル質を摩耗させ、歯茎を傷つける「オーバーブラッシング」の原因となります。 これが知覚過敏や、歯の根元がくさび状に削れる「くさび状欠損」を引き起こすリスクを高めます。
歯磨きの適切な力加減は、150g〜200g程度とされています。 これは、歯ブラシの毛先が歯の表面に軽く触れ、毛先が広がらない程度の非常に優しい力です。 ご家庭にあるキッチンスケール(はかり)に歯ブラシを当てて、どのくらいの力加減かを確認してみるのもおすすめです。
力を入れすぎないためのコツとして、歯ブラシの持ち方も重要です。余計な力が入りにくい「ペングリップ(鉛筆持ち)」を意識しましょう。 手全体で握り込む「パームグリップ」は力が入りやすいため、注意が必要です。
5.2 歯ブラシを小刻みに動かす
歯ブラシを大きく動かして磨く「のこぎり磨き」は、歯と歯の間の汚れが落ちにくく、歯茎を傷つける原因にもなります。歯を1〜2本ずつ丁寧に磨くことを意識し、5mm〜10mm程度の幅で小刻みに歯ブラシを動かすのが基本です。
目的に応じて、以下の代表的な磨き方を使い分けることで、より効果的に歯垢を除去できます。
5.2.1 基本的な歯ブラシの動かし方(スクラビング法)
スクラビング法は、歯の表面や噛み合わせの面に適した基本的な磨き方です。 歯ブラシの毛先を歯の面に直角(90度)に当て、軽い力で小刻みに往復運動させます。 操作が簡単で清掃効果が高いため、子どもから大人まで幅広く推奨される方法です。
5.2.2 歯周ポケットを意識した磨き方(バス法)
バス法は、歯周病の原因となる歯と歯茎の境目(歯周ポケット)の歯垢除去に効果的な磨き方です。 歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に45度の角度で当て、歯周ポケットに毛先を少し入れるようなイメージで、優しく振動させます。 歯茎のマッサージ効果も期待できますが、力を入れすぎると歯茎を傷める可能性があるため注意が必要です。
| 磨き方 | 歯ブラシの角度 | 動かし方 | 適した場所 | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| スクラビング法 | 歯の面に対して90度 | 小刻みな往復運動 | 歯の表面、噛み合わせの面 | 動かす幅が大きくなりすぎないように注意する。 |
| バス法 | 歯と歯茎の境目に45度 | ごく軽い力での微振動 | 歯と歯茎の境目(歯周ポケット) | 歯周病予防に効果的。力を入れすぎないことが重要。 |
5.3 歯磨き粉の量はつけすぎない
歯磨き粉をたくさんつけると泡立ちが良くなり、爽快感からしっかり磨けたと錯覚しがちです。しかし、泡立ちすぎると短時間で満足してしまい、磨き残しの原因になります。また、すすぎの回数が増えることで、フッ素などの有効成分が口の中に留まりにくくなるというデメリットもあります。
歯磨き粉の量は、年齢によって推奨される量が異なります。フッ素の効果を最大限に引き出すためにも、適切な量を守ることが大切です。
| 年齢 | 歯磨き粉の量(目安) | ポイント |
|---|---|---|
| 歯が生えてから〜2歳 | 米粒程度(1〜2mm) | うがいが難しい場合は、ガーゼなどで拭き取ります。 |
| 3歳〜5歳 | グリーンピース大(5mm) | 子供が自分で磨いた後は、保護者による仕上げ磨きが重要です。 |
| 6歳〜成人 | 歯ブラシの毛先全体(1.5cm〜2cm) | フッ素を口内に残すため、すすぎは少量の水で1回程度にしましょう。 |
これらのポイントを意識して毎日の歯磨きを行うことで、研磨剤による歯へのダメージを防ぎ、その効果を最大限に活用することができます。ご自身の歯の状態に不安がある場合や、正しい磨き方ができているか確認したい場合は、歯科医院で専門的な指導を受けることをお勧めします。
6. 歯磨き粉の研磨剤に関するよくある質問
歯磨き粉の研磨剤について、多くの方が抱える疑問にお答えします。正しい知識を身につけて、ご自身の歯の状態に合った歯磨き粉選びにお役立てください。
6.1 研磨剤なしの歯磨き粉で汚れは落ちますか?
結論から言うと、汚れの種類によります。研磨剤(清掃剤)が配合されていない歯磨き粉でも、歯ブラシによるブラッシングで、食べかすや歯垢(プラーク)といった比較的柔らかい汚れはある程度除去することが可能です。
しかし、コーヒーやお茶、ワインなどによる頑固な着色汚れ(ステイン)や、タバコのヤニを落とす効果は、研磨剤配合の歯磨き粉に比べて弱い傾向があります。 研磨剤は物理的にこれらの汚れを削り落とす役割を担っているためです。
研磨剤なしの歯磨き粉は、歯の表面を傷つけにくいという大きなメリットがあり、知覚過敏の方や歯のエナメル質が薄い方、インプラントやセラミックの被せ物をしている方には適しています。 もし着色汚れが気になる場合は、研磨剤の代わりに「ポリリン酸ナトリウム」や「ポリエチレングリコール(PEG)」など、化学的に汚れを浮かせて落とす成分が配合された製品を選ぶと良いでしょう。
6.2 ホワイトニング歯磨き粉と研磨剤の関係は?
多くの「ホワイトニング」を謳う市販の歯磨き粉には、研磨剤が配合されています。日本の薬機法(旧・薬事法)において、歯磨き粉に認められているホワイトニング効果とは、歯科医院で行うような歯そのものの色を漂白する「ブリーチング」ではなく、歯の表面に付着した着色汚れ(ステイン)などを除去し、歯本来の自然な白さに近づけることを指します。 このステイン除去の役割を担う主成分の一つが研磨剤なのです。
ただし、最近では研磨剤の働きに頼らないホワイトニング歯磨き粉も増えています。これらの製品には、以下のような化学的な作用を持つ成分が配合されています。
- 汚れを浮かせて落とす成分: ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール(PEG)などは、歯の表面とステインの間に入り込み、汚れを浮かび上がらせて除去しやすくします。
- 歯の表面を修復・コーティングする成分: 薬用ハイドロキシアパタイトなどは、歯の表面にあるミクロの傷を埋めて滑らかにし、汚れの再付着を防ぐ効果が期待できます。
研磨剤による物理的な除去と、これらの化学的な除去、どちらがご自身の歯の状態や目的に合っているかを確認して選ぶことが大切です。
6.3 研磨剤の主な成分名を教えてください
歯磨き粉のパッケージ裏面の成分表示では、「研磨剤」ではなく「清掃剤」と記載されていることが一般的です。 主な成分には以下のようなものがあります。
| 成分系統 | 主な成分名 | 特徴 |
|---|---|---|
| ケイ酸塩類 | 無水ケイ酸、含水ケイ酸(シリカ) | 最も広く使用されている成分の一つ。粒子の大きさや形状によって研磨力に幅があり、比較的歯に優しいものから清掃力が高いものまで様々です。 |
| リン酸塩類 | リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム | 歯や骨の成分に近いリン酸カルシウムを主成分としており、歯との親和性が高いとされています。 |
| 炭酸塩類 | 炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム) | 比較的清掃力が高い傾向にあります。古くから使用されている成分の一つです。 |
| 酸化物類 | 水酸化アルミニウム、酸化チタン | 清掃剤として、また歯を白く見せるための着色剤(酸化チタン)として配合されることもあります。 |
これらの成分は、国際規格(ISO)などで安全性が確認されたものが使用されていますが、もしご自身の歯に合うか不安な場合は、歯科医師や歯科衛生士に相談することをおすすめします。
7. まとめ
歯磨き粉の研磨剤は「歯に悪い」と思われがちですが、正しく使えば決して悪いものではありません。研磨剤には、着色汚れ(ステイン)や歯垢を効率的に除去し、歯をツルツルにするという重要なメリットがあります。一方で、力の入れすぎや自分に合わない製品の使用は、歯や歯茎を傷つける原因にもなります。ご自身の歯の状態や目的に合わせ、研磨剤配合・低研磨・無配合の歯磨き粉を適切に選び、正しいブラッシングを実践することが、健康な歯を保つ鍵となります。
札幌で矯正歯科を検討中の方は、ぜひ医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科でご相談ください。矯正治療のご相談をご希望の方は、下記のボタンよりお気軽にご予約ください。
この記事の監修者

尾立 卓弥(おだち たくや)
医療法人札幌矯正歯科 理事長
宮の沢エミル矯正歯科 院長
北海道札幌市の矯正専門クリニック「宮の沢エミル矯正歯科」院長。
日本矯正歯科学会 認定医。

