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2025.07.28

出っ歯を治す方法|自力は危険?歯科矯正の費用・期間を徹底解説

出っ歯を治す方法|自力は危険?歯科矯正の費用・期間を徹底解説

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出っ歯が気になり「自力で治せないか」と考えていませんか?しかし、自己流の方法は歯や顎を傷つけるリスクがあり大変危険です。この記事では、出っ歯の原因から、歯科医院で行うワイヤー矯正・マウスピース矯正といった治療法の違い、それぞれの費用相場や治療期間の目安を徹底解説します。あなたに合った治療法を見つけ、後悔しないための矯正歯科選びのポイントまで、専門家の視点で分かりやすくお伝えします。

目次

1. そもそも出っ歯(上顎前突)とは?考えられる原因

「出っ歯」とは、上の前歯や上顎全体が下の歯や下顎に比べて前方に出ている状態を指す俗称です。歯科の専門用語では「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」と呼ばれ、不正咬合(ふせいこうごう)の一種に分類されます。

単に見た目のコンプレックスになりやすいだけでなく、口が閉じにくいために口内が乾燥して虫歯や歯周病のリスクが高まったり、前歯で食べ物を噛み切りにくかったり、転倒した際に歯が折れたり唇を切りやすいなど、機能面や健康面でのデメリットも少なくありません。出っ歯と一言でいっても、その原因は一つではなく、大きく分けて「先天的な原因」と「後天的な原因」の2つが考えられます。

1.1 骨格の遺伝など先天的な原因

顔つきや体格が親から子へ遺伝するように、歯並びも遺伝的要因が大きく影響します。特に、顎の骨の大きさや形、歯のサイズといった骨格的な特徴は遺伝しやすく、これらが原因で出っ歯になるケースを「骨格性上顎前突」と呼びます。骨格が原因の場合、自力での改善は極めて困難であり、歯科医院での専門的な診断が不可欠です。

先天的な原因として考えられる主な特徴は以下の通りです。

  • 上顎の骨が、下顎の骨に比べて過剰に成長している
  • 下顎の骨が、上顎の骨に比べて小さい、または後方に位置している
  • 歯の大きさが顎のスペースに対して大きく、前に押し出されるように生えている
  • 生まれつき歯の本数が足りない、または多いために歯列が乱れている

ご両親やご親族に出っ歯の方がいる場合、遺伝的な要因が関係している可能性が高いと言えるでしょう。

1.2 指しゃぶりや口呼吸など後天的な原因

後天的な原因とは、主に幼少期の無意識の癖や習慣によって、後から出っ歯になってしまうケースです。このような癖を「口腔習癖(こうくうしゅうへき)」と呼びます。顎の骨や歯がまだ柔らかく、発達段階にある子どもの頃に長期間にわたって特定の力がかかり続けると、歯並びや骨格の形成に悪影響を及ぼすことがあります。

代表的な口腔習癖と、それが出っ歯につながる理由は次の通りです。

原因となる癖(口腔習癖) 出っ歯につながる理由
指しゃぶり 長期間(一般的に4〜5歳以降まで)続けると、指が上の前歯を前方に押し出し、下の前歯を内側に倒す圧力がかかり続けるため。開咬(かいこう)という、奥歯で噛んでも前歯が閉じない状態を併発することも多いです。
舌で前歯を押す癖(舌突出癖) 食べ物や唾液を飲み込む時(嚥下時)や発音時に、無意識に舌先で上の前歯の裏側を押し続けてしまう癖。この持続的な力が、歯を前方へ移動させる原因となります。
口呼吸 アレルギー性鼻炎や扁桃腺の肥大などで鼻が詰まり、口で呼吸する習慣がつくと、常に口が開いた状態になります。これにより、唇が歯を押さえる力が弱まり、舌の位置が下がることで、上の前歯が突出しやすくなります。
下唇を噛む・吸う癖(咬唇癖) 下の唇を上の前歯と下の前歯の間で噛んだり吸ったりする癖。この癖により、上の前歯は外側に押し出され、下の前歯は内側に倒れ込む力がかかり、出っ歯が悪化しやすくなります。
爪を噛む癖 指しゃぶりと同様に、前歯に継続的に不適切な圧力をかけることになり、歯並びの乱れにつながる可能性があります。

これらの後天的な原因は、癖を早期に改善することで、出っ歯の進行を予防したり、軽度に留めたりできる可能性があります。しかし、すでに歯並びや骨格に影響が出ている場合は、癖の改善と並行して矯正治療が必要になることがほとんどです。

より詳しい不正咬合の種類については、以下の情報もご参照ください。
参考:札幌の矯正歯科専門医院で出っ歯・すきっ歯・歯のデコボコの改善なら宮の沢エミル矯正歯科

2. 出っ歯を自力で治す方法が危険な理由

インターネットやSNS上では、「指で歯を押す」「割り箸を噛む」といった方法や、市販の矯正グッズを使って出っ歯を自力で治す情報が見受けられます。しかし、これらの方法は医学的根拠に乏しく、非常に危険な行為です。歯や顎の専門知識がないまま無理な力を加えることは、取り返しのつかないトラブルにつながる可能性があります。なぜ自力での矯正が危険なのか、その具体的な理由を詳しく解説します。

2.1 歯や歯茎を傷つけ歯並びが悪化するリスク

歯は、歯槽骨(しそうこつ)という顎の骨にしっかりと埋まっています。歯科矯正は、この歯と骨の間にある歯根膜(しこんまく)の働きを利用し、骨の吸収と再生を繰り返しながら、非常にゆっくりと歯を動かす専門的な治療です。しかし、素人が自己判断で歯に力を加えると、この繊細なバランスが崩壊してしまいます。

例えば、指で強く押し続けるような行為は、コントロールされていない過剰な力を歯に加えることになります。その結果、次のような深刻なダメージを引き起こす可能性があります。

  • 歯根吸収(しこんきゅうしゅう):歯の根っこが溶けて短くなってしまう現象です。歯根が短くなると歯を支える力が弱まり、歯がグラグラになったり、最悪の場合は歯が抜け落ちたりする原因となります。
  • 歯肉退縮(しにくたいしゅく):歯茎が下がり、歯の根元が露出してしまう状態です。見た目が悪くなるだけでなく、知覚過敏や虫歯のリスクが高まります。
  • 歯の破折・動揺:無理な力で歯が欠けたり、ひびが入ったり、グラグラになったりすることがあります。
  • 歯並びのさらなる悪化:意図しない方向に歯が動いてしまい、もともとの歯並びよりもガタガタになったり、噛み合わせが悪化したりするケースも少なくありません。

一度傷ついてしまった歯や歯茎、そして歯を支える骨は、簡単には元に戻りません。安易な気持ちで試した結果、将来的に大掛かりな治療が必要になる危険性を理解しておく必要があります。

2.2 噛み合わせが崩れて健康を害する可能性

出っ歯の治療は、単に見た目を整えるだけが目的ではありません。上下の歯が正しく噛み合う「機能的な噛み合わせ」を作ることも非常に重要です。自力で前歯だけを無理に動かそうとすると、奥歯とのバランスが崩れ、全体の噛み合わせが破綻してしまう危険性があります。

噛み合わせの悪化は、お口の中だけでなく全身の健康に悪影響を及ぼすことが知られています。具体的には、以下のような様々な不調を引き起こす可能性があります。

悪化した噛み合わせが引き起こす可能性のある症状 具体的な内容
顎関節症 口を開けると顎が痛む、カクカクと音が鳴る、口が開きにくいといった症状が現れます。
消化不良 食べ物をうまく咀嚼できないため、胃や腸などの消化器官に負担がかかり、胃もたれや消化不良の原因となります。
頭痛・肩こり 噛む筋肉のバランスが崩れることで、首や肩、頭部の筋肉が緊張し、慢性的な頭痛や肩こりを引き起こすことがあります。
発音障害 歯と舌の位置関係が変わり、特定の音(サ行、タ行など)が発音しにくくなることがあります。
顔の歪み 片側だけで噛む癖がつくなどして、顔の筋肉のバランスが崩れ、顔が歪んで見える原因になることもあります。

歯科矯正治療では、レントゲン撮影や歯型模型などを用いて口の中の状態を精密に検査し、見た目と機能の両方を考慮した治療計画を立てます。専門家による診断なしに歯を動かすことは、こうした全身の健康を損なうリスクを伴うのです。

2.3 効果が期待できず時間やお金の無駄に

そもそも、指で押したり市販のグッズを使ったりする程度で、骨に埋まっている歯を安全かつ正確に動かすことは不可能です。もし少し動いたように感じたとしても、それは歯が傾いただけか、あるいは歯がグラついている危険なサインかもしれません。

インターネットで販売されている安価な「セルフ矯正マウスピース」なども同様です。歯科医院で製作するマウスピースは、一人ひとりの歯型に合わせて精密に作られ、治療段階に応じて定期的に新しいものに交換していきます。一方、市販の既製品は個人の歯並びに合っておらず、効果がないばかりか、歯や歯茎に予期せぬダメージを与える可能性があります。

自力で治そうと費やした時間やお金は、結局無駄になってしまいます。それだけでなく、その間に症状が悪化すれば、本来は抜歯せずに済んだケースでも抜歯が必要になるなど、かえって歯科医院での治療が複雑になり、治療期間や費用が増大してしまうことにもなりかねません。

公益社団法人 日本矯正歯科学会も、専門家以外による診断や治療の危険性について警鐘を鳴らしています。出っ歯のお悩みは、まず矯正歯科の専門医に相談することが、安全で確実な解決への最短ルートと言えるでしょう。(参考: 公益社団法人 日本矯正歯科学会

3. 歯科医院で行う出っ歯の矯正方法

「出っ歯を自力で治したい」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、前述の通り、自力での対処は歯や顎に深刻なダメージを与える危険性が非常に高い行為です。出っ歯を安全かつ確実に治すためには、歯科医院で専門的な矯正治療を受けることが唯一の方法と言えます。

歯科医院で行われる出っ歯の矯正治療には、主に「ワイヤー矯正」と「マウスピース矯正」の2種類があります。それぞれの治療法には特徴があり、患者様の歯並びの状態、ライフスタイル、ご希望などに応じて最適な方法が選択されます。ここでは、代表的な矯正方法について詳しく解説します。

3.1 ワイヤー矯正(表側矯正)

ワイヤー矯正(表側矯正)は、最も歴史が長く、世界中で広く行われている実績のある矯正方法です。歯の表面(唇側)に「ブラケット」と呼ばれる小さな装置を一つひとつ接着し、そこにワイヤーを通して力を加えることで、歯を少しずつ正しい位置へと動かしていきます。

出っ歯(上顎前突)の治療では、前歯を後ろに下げるためのスペースを確保するために、小臼歯などを抜歯するケースが多く見られます。ワイヤー矯正は、歯を大きく動かす必要がある症例や、骨格的な問題が関わる複雑な症例にも対応できるため、多くの出っ歯治療で第一選択肢となり得る治療法です。

ブラケットの素材には、金属製(メタルブラケット)のほかに、白や透明で目立ちにくいセラミック製やプラスチック製のものもあり、審美的な要望に合わせて選ぶことができます。

3.1.1 ワイヤー矯正のメリット・デメリット

メリット デメリット
  • 対応できる症例の範囲が非常に広い
  • 歴史と実績があり治療結果の予測が立てやすい
  • 歯を動かす力が強く効率的な治療が可能
  • 素材を選べば費用を抑えることができる
  • 装置が歯の表面にあるため目立ちやすい
  • 装置が唇や頬の粘膜にあたり口内炎ができやすい
  • 装置が複雑で歯磨きがしにくく虫歯リスクが上がる
  • 調整後の痛みや違和感が出やすい
  • 食事に一部制限がある(硬いもの・粘着物など)

3.2 裏側矯正(舌側矯正)

裏側矯正(舌側矯正)は、ワイヤー矯正の一種ですが、ブラケットとワイヤーを歯の裏側(舌側)に装着する治療法です。装置が外側から全く見えないため、「矯正していることを他人に気づかれたくない」という方に最適な方法です。

見た目のメリットが非常に大きい一方で、歯の裏側は形状が複雑なため、装置の製作や調整には高度な技術と経験が求められます。そのため、どの歯科医院でも受けられるわけではなく、対応しているクリニックは限られます。また、慣れるまでは装置が舌にあたり、発音しにくさを感じることがあります。

3.2.1 裏側矯正のメリット・デメリット

メリット デメリット
  • 装置が外から見えないため審美性に非常に優れる
  • 人前に出る仕事の方でも安心して治療できる
  • 歯の表面を傷つけるリスクがない
  • 唾液の自浄作用で表側より虫歯になりにくいとされる
  • 舌に装置が当たり、違和感や発音障害が出やすい
  • 表側矯正に比べて費用が高額になる傾向がある
  • 対応している歯科医師やクリニックが限られる
  • 歯磨きが難しく、磨き残しに注意が必要

3.3 マウスピース矯正

マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の装置(アライナー)を段階的に交換していくことで歯を動かす、比較的新しい矯正方法です。代表的なものに「インビザライン」があります。

治療開始前に、3Dシミュレーションで治療後の歯並びまでを精密に計画し、その計画に基づいてオーダーメイドのマウスピースが複数作製されます。患者様自身で、通常1〜2週間ごとに新しいマウスピースに交換しながら治療を進めていきます。

最大の特長は、装置が透明で目立たないことと、食事や歯磨きの際に自分で取り外せることです。ただし、1日20〜22時間以上の装着時間を守るという徹底した自己管理が治療結果を大きく左右します。装着時間が不足すると、計画通りに歯が動かず、治療期間が延びてしまう原因となります。

3.3.1 マウスピース矯正のメリット・デメリット

メリット デメリット
  • 装置が透明で薄く、装着していても目立たない
  • 自分で取り外しができ、食事や歯磨きが普段通り行える
  • – ワイヤー矯正に比べて痛みや違和感が少ない

  • 口内炎などのトラブルが起きにくい
  • 金属アレルギーの心配がない
  • 重度の出っ歯など、適応できない症例がある
  • 1日20時間以上の装着時間を守る自己管理が必須
  • 食事のたびに着脱する手間がかかる
  • 紛失・破損のリスクがある
  • ワイヤー矯正より費用が高くなることがある

3.4 部分矯正と全体矯正の違い

出っ歯の治療を検討する際、「部分矯正」と「全体矯正」という選択肢があります。この2つは治療の目的や範囲が大きく異なります。

全体矯正は、奥歯を含めたすべての歯を動かし、見た目だけでなく噛み合わせの機能も改善することを目的とした治療です。抜歯を伴う出っ歯の治療や、骨格に原因がある場合は、基本的に全体矯正が必要となります。

一方、部分矯正は、気になる前歯だけなど、限定した範囲の歯並びを整える治療です。奥歯の噛み合わせに問題がなく、前歯の傾きが原因の軽度の出っ歯などが対象となります。治療期間が短く費用も抑えられますが、適応できる症例は限られており、自己判断は非常に危険です。出っ歯の原因を根本的に解決できない場合、後戻りのリスクも高まります。

どちらの治療法が適しているかは、精密検査に基づいた歯科医師の診断が不可欠です。カウンセリングで自分の希望を伝え、専門的な見地から最適な治療法を提案してもらいましょう。(参考:公益社団法人 日本矯正歯科学会|認定医・専門医・指導医・臨床医を探す

全体矯正 部分矯正
治療の目的 歯並び全体の見た目と噛み合わせの機能改善 前歯など限定的な範囲の見た目の改善
対象となる歯 すべての歯(奥歯を含む) 主に前歯(犬歯から犬歯までなど)
適応症例 抜歯が必要な出っ歯、骨格性の出っ歯、噛み合わせに問題がある場合など、幅広い症例に対応 奥歯の噛み合わせに問題がない、軽度の出っ歯など、症例が限定される
治療期間 長い(1年半~3年程度) 短い(数ヶ月~1年程度)
費用 高くなる傾向 安く抑えられる傾向

4. 出っ歯の矯正にかかる費用相場

出っ歯の矯正治療を検討する際に、最も気になる点の一つが費用ではないでしょうか。歯科矯正は、一部の例外を除いて基本的に保険適用外の自由診療となるため、治療費は全額自己負担となります。そのため、クリニックによって費用設定が大きく異なります。

費用は、治療方法や使用する装置の種類、治療範囲(全体矯正か部分矯正か)、抜歯の有無、治療の難易度などによって変動します。また、提示される料金体系には、装置代や毎月の調整料などをすべて含んだ「トータルフィー制度(総額提示制度)」と、最初に装置代を支払い、通院のたびに調整料などを支払う「都度払い制度」があります。カウンセリングの際には、どの費用がどこまで含まれているのかをしっかりと確認することが重要です。

ここでは、代表的な矯正方法ごとの費用相場を解説します。

4.1 ワイヤー矯正の費用

ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットという装置を取り付け、そこにワイヤーを通して歯を動かす最も歴史のある治療法です。費用は、ブラケットの素材によっても変わります。

金属製のメタルブラケットは最も安価ですが、見た目が目立ちやすいという特徴があります。一方、白や透明のセラミックブラケットやプラスチックブラケットは、メタルブラケットに比べて目立ちにくいですが、費用は高くなる傾向があります。

ワイヤー矯正(表側)の費用内訳と相場
項目 費用相場 備考
カウンセリング 無料~1万円程度 初回の相談費用です。無料のクリニックも多くあります。
精密検査・診断料 3万円~6万円程度 レントゲン撮影、歯型採取、口腔内写真撮影など、治療計画を立てるための検査費用です。
装置料・技術料(全体矯正) 60万円~100万円程度 上下すべての歯を動かす場合の費用です。
装置料・技術料(部分矯正) 30万円~60万円程度 前歯など、気になる部分だけを動かす場合の費用です。
調整料(処置料) 3,000円~1万円程度/回 月1回程度の通院時にかかる費用です。トータルフィー制度の場合は不要なことが多いです。
保定装置料 3万円~6万円程度 動かした歯が後戻りするのを防ぐ装置(リテーナー)の費用です。
保定観察料 3,000円~5,000円程度/回 保定期間中の経過観察のための通院費用です。

トータルの費用相場は、部分矯正で30万円~70万円、全体矯正で60万円~110万円程度が目安となります。

4.2 裏側矯正の費用

裏側矯正(舌側矯正)は、歯の裏側に装置を取り付けるため、外からは見えにくく、審美性に優れた治療法です。しかし、装置の製作が複雑で、治療にも高い技術力が求められるため、表側矯正に比べて費用は高額になります。

特に、上顎だけを裏側矯正にし、下の歯は表側矯正にする「ハーフリンガル矯正」を選択することで、費用を抑えることも可能です。

裏側矯正(舌側矯正)の費用内訳と相場
項目 費用相場 備考
精密検査・診断料 3万円~6万円程度 表側矯正と同様です。
装置料・技術料(全体矯正) 100万円~150万円程度 表側矯正よりも高額になります。
装置料・技術料(部分矯正) 40万円~70万円程度 対応できる症例は限られます。
調整料(処置料) 5,000円~1万円程度/回 表側矯正よりやや高くなる傾向があります。

トータルの費用相場は、部分矯正で40万円~80万円、全体矯正で100万円~170万円程度が目安となります。

4.3 マウスピース矯正の費用

マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の装置を定期的に交換しながら歯を動かす治療法です。装置が目立たず、自分で取り外しができる手軽さから人気が高まっています。費用は、治療範囲や使用するマウスピースの枚数によって大きく変動します。

代表的なブランドには「インビザライン」などがあり、ブランドによっても費用が異なります。重度の出っ歯など、症例によっては適応できない場合もあります。

マウスピース矯正の費用内訳と相場
項目 費用相場 備考
精密検査・診断料 3万円~6万円程度 3Dシミュレーション作成費用などが含まれる場合があります。
装置料・技術料(全体矯正) 80万円~120万円程度 治療計画全体で必要となるマウスピースの費用です。
装置料・技術料(部分矯正) 30万円~70万円程度 使用するマウスピースの枚数が少ないプランの費用です。
調整料(処置料) 0円~1万円程度/回 トータルフィー制度を採用しているクリニックが多いです。

トータルの費用相場は、部分矯正で30万円~70万円、全体矯正で80万円~130万円程度が目安です。ワイヤー矯正と同様に、保定装置料や保定観察料が別途必要になる場合があります。

4.4 矯正費用は医療費控除の対象になる?

高額になりがちな矯正治療ですが、条件を満たせば「医療費控除」の対象となり、支払った税金の一部が還付される可能性があります。

医療費控除とは、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費の合計が一定額を超えた場合に、所得控除を受けられる制度です。ポイントは、矯正治療の目的が「審美(見た目の改善)」だけでなく、「機能回復(噛み合わせの改善など)」であると認められる必要がある点です。

出っ歯の場合、見た目の問題だけでなく、「食べ物が噛みにくい」「発音がしづらい」といった機能的な問題や、将来的な歯周病のリスクを抱えているケースが多くあります。このような場合、担当の歯科医師が「治療が必要」と診断すれば、医療費控除の対象となる可能性が高いです。子どもの矯正治療は、健全な発育を促す目的があるため、ほとんどの場合で対象となります。

医療費控除を受けるためには、ご自身で確定申告を行う必要があります。その際、歯科医院から発行された領収書が必要になりますので、必ず保管しておきましょう。また、デンタルローンやクレジットカードの分割払いを利用した場合も、信販会社が立て替えた年の医療費控除の対象となります。

詳しくは、お住まいの地域を管轄する税務署や、国税庁のウェブサイトでご確認ください。

No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例|国税庁

5. 出っ歯の矯正にかかる期間の目安

出っ歯の矯正治療を検討する際、多くの方が気になるのが「どのくらいの期間がかかるのか」という点でしょう。矯正にかかる期間は、お口の状態、年齢、選択する治療法、抜歯の有無など、さまざまな要因によって大きく変動します。ここでは、出っ歯の矯正にかかる期間の目安を多角的に解説します。

あくまで一般的な目安であり、正確な期間は歯科医師による精密検査と診断を経て決定されることを念頭に置いておきましょう。

5.1 治療方法ごとの矯正期間

出っ歯の矯正期間は、主にどの治療法を選択するかによって変わります。それぞれの装置の特性と、それに伴う期間の目安を以下に示します。

治療方法 全体矯正の期間目安 特徴
ワイヤー矯正(表側) 1年~3年程度 歯の表面にブラケットとワイヤーを装着する方法。最も歴史が長く、幅広い症例に対応可能です。比較的強い力を継続的にかけられるため、効率的に歯を動かせます。
裏側矯正(舌側矯正) 2年~3年程度 歯の裏側に装置を装着するため、外から見えにくいのが最大の特徴です。表側矯正に比べて技術的な難易度が高く、治療期間がやや長くなる傾向があります。
マウスピース矯正 1年半~3年程度 透明なマウスピースを定期的に交換して歯を動かします。取り外しが可能で目立ちにくいですが、1日20時間以上の装着が必要。患者様の協力度が治療期間に大きく影響します。

部分矯正の場合は、動かす歯の範囲が限定されるため、期間は数ヶ月から1年半程度と短くなります。ただし、出っ歯の原因が骨格にある場合や、奥歯の噛み合わせから治す必要がある場合は、部分矯正の適用が難しいこともあります。

5.2 抜歯の有無による期間の違い

出っ歯の矯正では、歯をきれいに並べるスペースを確保するために抜歯を行うことがあります。特に、顎の大きさと歯の大きさのバランスが取れていない重度の出っ歯の場合、抜歯が必要となるケースが多くなります。

抜歯を伴う矯正治療は、抜歯によってできたスペースを利用して前歯を大きく後ろに下げるため、抜歯をしない場合に比べて治療期間が長くなるのが一般的です。具体的には、6ヶ月から1年ほど追加で期間が必要になることがあります。

抜歯の必要性は、レントゲン撮影や歯型採りなどの精密検査の結果に基づいて、歯科医師が総合的に判断します。自己判断で抜歯の有無を決めることはできないため、まずはカウンセリングで相談することが重要です。

5.3 矯正治療全体の流れと期間

矯正治療は、装置をつけて歯を動かす期間だけではありません。カウンセリングから始まり、治療後の後戻りを防ぐ「保定期間」まで含めて一つの治療です。ここでは、治療全体の流れと各ステップにかかる期間を解説します。

5.3.1 初診カウンセリングから精密検査

まず、初診カウンセリングで患者様のお悩みや希望を伺い、治療の概要や費用について説明を受けます。治療を進める意思が固まったら、診断に必要な精密検査を行います。精密検査では、レントゲン撮影、CT撮影、歯型の採取、顔や口の中の写真撮影などが行われます。

この段階は、通院回数としては1〜2回、期間としては1週間〜1ヶ月程度が目安です。検査結果をもとに、歯科医師が詳細な治療計画を立案します。

5.3.2 動的治療期間(歯を動かす期間)

動的治療期間とは、実際に矯正装置を装着して歯を動かしていく期間のことです。多くの方が「矯正期間」としてイメージするのがこの期間にあたります。歯やその周りの骨は、力を加えることで少しずつ作り変えられ、歯が移動していきます。

期間の目安は前述の通り、全体矯正で1年〜3年程度です。この間、ワイヤー矯正の場合は月に1回程度、マウスピース矯正の場合は1〜3ヶ月に1回程度の頻度で通院し、装置の調整や歯の動きのチェックを行います。計画通りに治療を進めるためには、歯科医師の指示を守り、定期的な通院を欠かさないことが非常に重要です。

5.3.3 保定期間(後戻りを防ぐ期間)

動的治療が完了し、歯並びが整ったら矯正装置を外します。しかし、治療直後の歯は元の位置に戻ろうとする「後戻り」を起こしやすい不安定な状態です。この後戻りを防ぎ、動かした歯を新しい位置に定着させるために、「リテーナー(保定装置)」を装着する期間が保定期間です。

保定期間の目安は、歯を動かした動的治療期間とほぼ同じ期間(約1年〜3年)とされています。この期間を怠ると、せっかくきれいにした歯並びが元に戻ってしまうリスクがあるため、矯正治療において極めて重要なステップです。通院は3〜6ヶ月に1回程度となり、リテーナーの使用状況や歯並びの状態を確認します。保定期間が終了した後も、良好な状態を維持するために、歯科医師の指示に従ってリテーナーの使用を続けることが推奨される場合もあります。

矯正治療の期間に関するより専門的な情報については、公益社団法人 日本矯正歯科学会のウェブサイトなども参考にされると良いでしょう。

6. 失敗しない矯正歯科の選び方

出っ歯の矯正治療は、決して安くはない費用と長い期間がかかるため、クリニック選びは治療の成否を分ける非常に重要なステップです。治療を始めてから「こんなはずではなかった」と後悔しないために、信頼できる歯科医院を見極めるための6つのポイントを詳しく解説します。

6.1 矯正治療の経験が豊富な歯科医師か

歯科矯正は、歯科治療の中でも特に専門性が高い分野です。そのため、どの歯科医師でも同じ品質の治療が提供できるわけではありません。矯正治療を専門とし、豊富な知識と経験を持つ歯科医師を選ぶことが、理想の歯並びへの近道となります。

まず確認したいのが、歯科医師の資格です。特に「日本矯正歯科学会」の「認定医」や「専門医」は、一定期間の研修と厳しい審査基準をクリアした歯科医師にのみ与えられる資格であり、技術力や経験の一つの指標となります。クリニックのウェブサイトで所属医師の経歴を確認したり、以下のサイトで近隣の認定医を探したりしてみましょう。

また、資格だけでなく、これまでの症例数や、自分と似た「出っ歯(上顎前突)」の治療実績が豊富かどうかも重要な判断材料です。カウンセリングの際に、具体的な症例写真(ビフォーアフター)を見せてもらえるか確認してみましょう。

6.2 カウンセリングで納得できる説明があるか

実際に治療を担当する歯科医師との相性や、治療方針への納得感は、長い治療期間のモチベーションを維持する上で欠かせません。初回のカウンセリングでは、以下の点を重点的にチェックしましょう。

  • 悩みや希望を丁寧に聞いてくれるか:こちらの話に真摯に耳を傾け、不安な点や理想のゴールを共有しようとしてくれる姿勢があるか。
  • 分かりやすい説明か:専門用語を多用せず、レントゲン写真や歯の模型、3Dシミュレーションなどを使い、現在の歯並びの問題点や治療計画を視覚的に分かりやすく説明してくれるか。
  • 複数の選択肢を提示してくれるか:ワイヤー矯正やマウスピース矯正など、考えられる治療法の選択肢を複数提示し、それぞれのメリット・デメリットを公平に説明してくれるか。一つの治療法を強引に勧めてくる場合は注意が必要です。
  • リスクやデメリットの説明があるか:治療に伴う痛み、装置による違和感、後戻りの可能性、日常生活での注意点など、治療のネガティブな側面についても包み隠さず正直に説明してくれるかは、信頼できる医師かどうかを見極める重要なポイントです。
  • 質問しやすい雰囲気か:些細なことでも気軽に質問でき、それに対して丁寧に答えてくれるか。医師やスタッフの対応も確認しましょう。

いくつかのクリニックでカウンセリング(セカンドオピニオン)を受け、比較検討することをおすすめします。

6.3 費用体系が明確でわかりやすいか

矯正治療の費用は高額になるため、後から予期せぬ追加費用が発生するといったトラブルを避けるためにも、費用体系の明確さは必ず確認すべき項目です。矯正治療の費用体系には、主に「トータルフィー制度(総額提示制)」と「処置ごとの支払い制度」の2種類があります。

費用体系 メリット デメリット・注意点
トータルフィー制度(総額提示制) 治療開始から終了(保定期間含む)までの総額が最初に明示されるため、費用の見通しが立てやすく安心。 初期費用が高額になりやすい。治療が予定より早く終わっても返金がない場合がある。
処置ごとの支払い制度 治療の進行度に合わせて支払うため、一度に大きな金額を用意する必要がない場合がある。 毎月の調整料などがかかり、治療期間が長引くと総額がトータルフィー制度より高くなる可能性がある。

どちらの制度が良いというわけではありませんが、重要なのは「治療完了までに総額でいくらかかるのか」を事前に正確に把握できることです。カウンセリングの際には、必ず書面で見積書をもらい、以下の内容が含まれているかを確認しましょう。

  • 精密検査・診断料
  • 矯正装置の費用
  • 毎回の調整料・管理料
  • 抜歯が必要な場合の費用(保険適用外の場合)
  • 治療後の保定装置(リテーナー)の費用
  • 保定期間中の観察料

「調整料はいつまで発生するのか」「装置の紛失・破損時に追加費用はかかるか」など、細かい点までしっかり確認し、納得した上で契約することが大切です。

6.4 継続して通いやすいクリニックか

矯正治療は、歯を動かす「動的治療期間」で1〜3年、歯並びを安定させる「保定期間」でさらに2〜3年と、トータルで数年にわたる長い付き合いになります。そのため、無理なく継続して通えるクリニックを選ぶことが、治療を成功させるための隠れた重要ポイントです。

  • 立地・アクセス:自宅や職場、学校からアクセスしやすい場所にあるか。駅からの距離や、車で通う場合は駐車場の有無も確認しましょう。
  • 診療時間・曜日:平日の夜間や、土日も診療していると、仕事や学業と両立しやすくなります。ご自身のライフスタイルに合った診療時間のクリニックを選びましょう。
  • 予約の取りやすさ:人気のあるクリニックでは予約が数週間先まで埋まっていることもあります。Web予約システムの導入や、急な予定変更への対応など、予約の取りやすさや柔軟性も確認しておくと安心です。
  • 院内の雰囲気:院内が清潔に保たれているか、スタッフの対応は丁寧かなど、気持ちよく通える環境かどうかもチェックしましょう。

6.5 医療法人札幌矯正歯科では矯正相談を行っています

ここまでご紹介した「失敗しない矯正歯科の選び方」のポイントは、すべて当院が大切にしていることです。医療法人札幌矯正歯科では、出っ歯をはじめとする歯並びのお悩みを持つ方のために、無料の矯正相談を実施しております。

当院では、日本矯正歯科学会の認定医が、患者様一人ひとりのお悩みやご希望を丁寧にヒアリングし、精密検査の結果をもとに、3Dシミュレーションなども活用しながら最適な治療計画を分かりやすくご提案します。費用についても、治療完了までの総額が明確なトータルフィー制度を採用しており、安心して治療をスタートしていただけます。

宮の沢駅から徒歩1分でアクセスも良く、土曜も診療しておりますので、お仕事や学校で忙しい方でも無理なく通院を続けていただくことが可能です。出っ歯の治療を検討している方は、ぜひ一度、お気軽に当院のカウンセリングにお越しください。

7. まとめ

出っ歯を自力で治そうとすることは、歯や歯茎を傷つけたり噛み合わせを悪化させたりする危険性が高いため、絶対に避けるべきです。安全かつ確実に歯並びを整えるには、歯科医院での矯正治療が唯一の方法です。治療法にはワイヤー矯正やマウスピース矯正などがあり、費用や期間はそれぞれ異なります。まずは信頼できる歯科医師に相談し、ご自身の希望や口内の状態に合った最適な治療計画を立てることが、理想の口元への第一歩となります。

矯正治療のご相談をご希望の方は、下記のボタンよりお気軽にご予約ください。

この記事の監修者

尾立 卓弥(おだち たくや)

医療法人札幌矯正歯科 理事長
宮の沢エミル矯正歯科 院長

北海道札幌市の矯正専門クリニック「宮の沢エミル矯正歯科」院長。
日本矯正歯科学会 認定医。

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