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2025.12.01

歯磨き粉のフッ素は危険って本当?メリット・デメリットと安全な製品の選び方を歯科医師が解説

歯磨き粉のフッ素は危険って本当?メリット・デメリットと安全な製品の選び方を歯科医師が解説

フッ素

こんにちは。医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科の理事長の尾立卓弥です。札幌で矯正歯科を検討中の方は、ぜひ医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科でご相談ください。「歯磨き粉のフッ素は危険」という噂を聞き、使うのが不安になっていませんか?この記事を読めば、フッ素が危険と言われる理由と真相、虫歯予防における絶大なメリット、そして子供から大人まで年齢別の適切なフッ素濃度(ppm)や使用量が分かります。歯科医師が推奨する安全な歯磨き粉の選び方から効果を最大化する使い方まで解説するので、フッ素を正しく理解し、あなたの歯を守る最も強力な味方にしましょう。

目次

1. 結論 歯磨き粉のフッ素は正しく使えば安全で虫-歯予防に非常に効果的

「歯磨き粉に含まれるフッ素は、体に悪い影響があるのでは?」と不安に感じていませんか。インターネット上には様々な情報があり、フッ素配合の歯磨き粉を使うべきか迷っている方も少なくないでしょう。しかし、結論から言うと、フッ素は適切な量と方法で使用すれば人体にとって安全であり、虫歯予防に極めて高い効果を発揮します。

実際に、世界保健機関(WHO)や日本歯科医師会をはじめとする国内外の多くの専門機関が、虫歯予防におけるフッ素の有効性と安全性を認め、その利用を推奨しています。 日本で市販されている歯磨き粉の9割以上にフッ素が配合されていることからも、その信頼性がうかがえます。 この章では、なぜフッ素が虫歯予防の切り札と言われるのか、その安全性と効果の全体像を解説します。

この記事を最後まで読めば、フッ素に関する正しい知識が身につき、ご自身やご家族のために安心して最適な歯磨き粉を選べるようになります。

1.1 フッ素の安全性と虫歯予防効果の概要

フッ素配合歯磨き粉の安全性と効果について、要点を以下の表にまとめました。危険だという噂は、主に過剰摂取した場合のリスクを指すものですが、歯磨きで通常使用する量ではまず起こりえません。

項目 概要
安全性 用法・用量を守れば、乳幼児から高齢者まで安全に使用できます。歯磨き粉に含まれるフッ素は、毒性が問題となる有機フッ素化合物(PFAS)とは全く異なる無機フッ素化合物です。 通常使用で急性中毒などを心配する必要はほとんどありません。
虫歯予防効果 科学的根拠に基づいた3つの大きな効果で、虫歯の発生と進行を防ぎます。フッ素配合歯磨き粉の使用により、虫歯の発生率が20~30%減少するというデータもあります。 家庭でできる最も手軽で効果的な虫歯予防法です。

1.2 世界的に認められた虫歯予防のスタンダード

フッ素による虫歯予防は、1900年代初頭の研究から始まり、その効果と安全性が確立されてきました。 現在では、水道水にフッ素を添加する方法(水道水フロリデーション)や、歯科医院でのフッ素塗布、そして家庭でのフッ素配合歯磨き粉の使用が、世界標準の虫歯予防策として広く普及しています。

厚生労働省も「e-ヘルスネット」などの情報サイトを通じて、フッ素の有効性に関する情報を提供し、その利用を推奨しています。 後の章で詳しく解説しますが、フッ素には主に以下の3つの働きがあり、これらが複合的に作用することでお口の中を虫歯になりにくい環境に整えてくれるのです。

  • 再石灰化の促進:食事で溶けかかった歯の表面を修復する働きを助けます。
  • 歯質の強化:歯の主成分と結びつき、酸に溶けにくい丈夫な歯を作ります。
  • 虫歯菌の活動抑制:虫歯菌が酸を作り出す働きを弱めます。

このように、フッ素は確かな科学的根拠に裏付けられた虫歯予防成分です。次の章からは、なぜ「危険」という噂が流れるのか、その真相と、フッ素がもたらす具体的なメリットについて、さらに詳しく掘り下げていきます。

2. なぜ歯磨き粉のフッ素は危険だと言われるのか?噂の真相を解説

「フッ素は体に悪い」「危険な物質だ」といった情報をインターネットなどで見かけ、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、結論から言うと、歯磨き粉に含まれるフッ素は、推奨される使用量を守って正しく使えば、危険性は極めて低く、虫歯予防に非常に有益な成分です。フッ素が危険だと言われる背景には、「過剰摂取」という特殊な状況が関係しています。ここでは、フッ素の危険性として挙げられる2つの事象について、その真相を詳しく解説します。

2.1 フッ素の過剰摂取で起こりうる「急性中毒」とは

フッ素の危険性としてまず語られるのが「急性中毒」です。これは、一度に非常に大量のフッ素を摂取した際に起こる中毒症状で、主な症状として吐き気や嘔吐、腹痛などが挙げられます。しかし、これは歯磨き粉を通常の歯磨きで使用している際に起こることはまず考えられません。

フッ素の急性中毒が起こる可能性がある摂取量(推定中毒量)は、体重1kgあたりフッ素5mgとされています。具体的にどれくらいの量なのか、体重別に見てみましょう。

体重別のフッ素推定中毒量
体重 フッ素推定中毒量 フッ素濃度1000ppmの歯磨き粉に換算した量
10kg 50mg 約50g(歯磨き粉チューブ約半分)
15kg 75mg 約75g(歯磨き粉チューブ約3/4)
20kg 100mg 約100g(歯磨き粉チューブ約1本)

※フッ素濃度1000ppmの歯磨き粉は、1gあたり1mgのフッ素イオンを含みます。

上記の表からわかるように、例えば体重10kgのお子さんが急性中毒を起こすには、フッ素濃度1000ppmの歯磨き粉をチューブの半分(約50g)も一度に飲み込む必要があります。毎日の歯磨きで誤って少量を飲み込んでしまったとしても、中毒症状が起こる量には到底及びません。そのため、通常の歯磨きにおいて急性中毒を心配する必要はまずないと言えるでしょう。この推定中毒量については、厚生労働省が運営する情報サイト「e-ヘルスネット」でも詳しく解説されています。

2.2 長期間の過剰摂取による「歯のフッ素症」のリスク

もう一つ、フッ素の長期的な過剰摂取によって起こりうるものとして「歯のフッ素症(斑状歯)」があります。これは、歯が作られる大切な時期(生後6ヶ月〜8歳頃)に、必要量を超えるフッ素を継続的に摂取し続けることで、歯のエナメル質に白い斑点やシミ模様が現れる症状のことです。

ただし、歯のフッ素症の主な原因は、水道水フッ素化が行われている地域で、その水道水を日常的に飲用している場合や、フッ素のサプリメントを過剰に摂取した場合などです。日本では水道水のフッ素化は行われていないため、日常生活における歯のフッ素症のリスクは非常に低いと考えられています。

歯磨き粉の使用が原因で歯のフッ素症になることは極めて稀ですが、うがいが上手にできない小さなお子さんが、フッ素濃度が高い歯磨き粉を毎日大量に飲み込み続けるといった不適切な使い方をした場合に、そのリスクがゼロとは言い切れません。だからこそ、後述する年齢に合わせたフッ素濃度の歯磨き粉を、適切な量で使用することが重要になるのです。

歯のフッ素症の重症度と見た目の変化
重症度 歯の見た目の変化
ごく軽度〜軽度 歯の表面に白濁した線や小さな斑点が見られる。審美的な問題が主で、虫歯に対する抵抗性はむしろ高まることがある。
中等度 歯の表面全体に白濁が広がり、一部が褐色に変色することがある。
重度 エナメル質が形成不全となり、歯の表面が凸凹になったり、欠けやすくなったりする。日本ではほとんど見られない。

このように、フッ素が「危険」と言われる背景には、あくまで「極端な過剰摂取」があります。歯磨き粉に配合されているフッ素は、虫歯予防の効果が科学的に証明されており、推奨される用法・用量を守れば、そのリスクを心配する必要はなく、安全かつ非常に有効な成分なのです。

3. 虫歯予防の決定版 歯磨き粉に含まれるフッ素の3つのメリット

歯磨き粉に配合されているフッ素(フッ化物)は、世界保健機関(WHO)もその使用を推奨するなど、虫歯予防に欠かせない成分として広く認知されています。フッ素が虫歯を防ぐメカニズムは、主に3つの大きな働きによるものです。これらの効果を正しく理解し、日々のオーラルケアに活かすことで、虫歯のリスクを大幅に減らすことが可能です。

3.1 メリット1 歯の再石灰化を促進し初期虫歯を修復する

私たちの口の中では、食事をするたびに歯の表面からカルシウムやリンといったミネラルが溶け出す「脱灰(だっかい)」と、唾液の力によってミネラルが歯に戻る「再石灰化(さいせっかいか)」が繰り返されています。 このバランスが崩れ、脱灰が進むと虫歯になります。フッ素は、この再石灰化の働きを強力にサポートする効果があります。 歯の表面にフッ素が存在すると、唾液中のカルシウムイオンやリン酸イオンが効率よく歯に取り込まれるのを助け、溶け出したエナメル質の修復を促進します。 これにより、穴が開く手前のごく初期段階の虫歯であれば、削らずに治癒させることが期待できるのです。

3.2 メリット2 歯質を強化し酸に溶けにくい歯を作る

フッ素のもう一つの重要な働きは、歯そのものの質を強くすることです。歯の表面を覆うエナメル質は、「ハイドロキシアパタイト」という結晶構造からできています。 この構造は、虫歯菌が作り出す酸に弱いという弱点があります。しかし、再石灰化の際にフッ素が歯に取り込まれると、ハイドロキシアパタイトが「フルオロアパタイト」という、より安定した酸に強い結晶構造に変化します。 このフルオロアパタイトで構成された歯は、虫歯菌が産生する酸への抵抗力が高まり、簡単には溶けない丈夫な歯になります。 この歯質強化作用は、特に生えたばかりの永久歯など、まだ歯質が未成熟な歯に対して非常に効果的です。

ハイドロキシアパタイトとフルオロアパタイトの比較
ハイドロキシアパタイト フルオロアパタイト
構成 歯の本来のエナメル質の結晶構造 フッ素が取り込まれ、より安定した結晶構造
酸への耐性 低い 高い

3.3 メリット3 虫歯菌の働きを弱め酸の生成を抑制する

フッ素は、歯を守るだけでなく、虫歯の根本原因である虫歯菌(主にミュータンス菌)の活動を直接的に抑制する効果も持っています。 虫歯菌は、飲食物に含まれる糖を分解してエネルギーを得る際に、歯を溶かす酸を産生します。フッ素が歯垢(プラーク)の中に取り込まれると、虫歯菌の内部に侵入し、糖を分解して酸を作り出すために必要な酵素(エノラーゼなど)の働きを阻害します。 これにより、虫歯菌の活動が弱まり、酸の産生量そのものが減少します。 結果として、口内が酸性に傾きにくくなり、脱灰が起こりにくい環境を維持することができるのです。この働きは、厚生労働省のe-ヘルスネットでも解説されています。 e-ヘルスネット フッ化物利用(概論)

4. 【年齢別】歯磨き粉のフッ素濃度(ppm)と使用量の目安

歯磨き粉に含まれるフッ素(フッ化物)は、虫歯予防に非常に高い効果を発揮しますが、その効果を最大限に引き出し、かつ安全に使用するためには、年齢に応じたフッ素濃度(ppm)と使用量を守ることが極めて重要です。特に、うがいが上手にできない小さなお子様の場合は、飲み込んでしまう量を考慮した使い方を心がける必要があります。

2023年1月には、日本口腔衛生学会、日本小児歯科学会など4つの主要な歯科学会が合同で、フッ化物配合歯磨剤の推奨利用方法を改定しました。 ここでは、最新のガイドラインに基づいた年齢別の推奨事項を詳しく解説します。

4.1 乳幼児期(6ヶ月〜5歳)のフッ素濃度と使い方

乳歯が生え始める生後6ヶ月頃から、フッ素配合歯磨き粉の使用を開始することが推奨されています。 生えたばかりの歯は歯質が弱く、非常に虫歯になりやすいため、早期からのフッ素ケアが大切です。 この時期は、まだうがいが上手にできない、あるいは全くできないため、飲み込んでしまうことを前提としたフッ素濃度と使用量が定められています。

4.1.1 歯の萌出〜2歳

最初の歯が生えてきたら、フッ素濃度1000ppmの歯磨き粉を米粒大(1〜2mm程度)使用します。 保護者が歯ブラシに歯磨き粉を乗せ、仕上げ磨きをしてあげましょう。歯磨きの後は、濡らしたガーゼやコットンで歯の表面を優しく拭き取ってあげるのがおすすめです。

4.1.2 3歳〜5歳

自分でうがいができるようになってくるこの時期は、フッ素濃度1000ppmの歯磨き粉をグリーンピース大(5mm程度)に増やします。 お子様が自分で歯磨きをする場合でも、必ず保護者の方が適切な量を歯ブラシに出してあげ、磨き残しがないか仕上げ磨きをしてください。

この時期のポイントは、歯磨き後のうがいです。フッ素の効果を口の中に長くとどめるため、少量の水(5〜10ml程度)で1回だけ軽くゆすぐように習慣づけましょう。

年齢 推奨フッ素濃度 使用量の目安 使い方・注意点
6ヶ月〜2歳 1000ppm 米粒大(1〜2mm) 保護者が仕上げ磨きを行う。歯磨き後はガーゼで拭き取るか、うがいはしない。
3歳〜5歳 1000ppm グリーンピース大(5mm) 保護者が量を調整し、仕上げ磨きを行う。うがいは少量の水で1回だけ。

※6歳未満のお子様には、フッ素濃度1500ppmの歯磨き粉の使用は控えてください。

4.2 学童期(6歳〜14歳)のフッ素濃度と使い方

6歳頃からは乳歯が永久歯へと生え変わる、非常に重要な時期です。生えたばかりの永久歯は、まだ歯質が完全に成熟しておらず、酸に弱い状態のため、虫歯になるリスクが最も高い時期と言えます。 この大切な歯を虫歯から守るため、より効果の高いフッ素ケアが推奨されます。

この年齢からは、大人と同じフッ素濃度1500ppmの歯磨き粉を使用することが可能です。 使用量は、歯ブラシの毛先全体に広がる1.5〜2cm程度が目安です。 永久歯は生涯使い続ける大切な歯です。特に虫歯になりやすい奥歯の溝や歯と歯の間は、意識して丁寧に磨くようにしましょう。

年齢 推奨フッ素濃度 使用量の目安 使い方・注意点
6歳〜14歳 1500ppm 歯ブラシ全体(1.5〜2cm) 生え始めの永久歯を意識して磨く。うがいは少量の水で1回だけ。

4.3 成人(15歳以上)におすすめのフッ素濃度

永久歯が生えそろった15歳以上の方も、継続的なフッ素ケアが虫歯予防の鍵となります。 成人になると、歯周病や加齢によって歯茎が下がり、歯の根元が露出することがあります。この露出した歯根はエナメル質に覆われていないため酸に弱く、大人の虫歯である「根面う蝕(こんめんうしょく)」のリスクが高まります。

虫歯のリスクが高い成人には、日本で市販が認められている上限濃度に近い1450ppm〜1500ppmの高濃度フッ素配合歯磨き粉の使用が推奨されています。 使用量は歯ブラシ全体にたっぷり乗せる2cm程度を目安にしてください。 フッ素の効果を最大限に活かすため、歯磨き後のうがいは少量の水で1回に留めることを徹底しましょう。

年齢 推奨フッ素濃度 使用量の目安 使い方・注意点
15歳以上(成人) 1500ppm 歯ブラシ全体(約2cm) 根面う蝕のリスクも考慮してケアする。うがいは少量の水で1回だけ。

これらの推奨事項は、日本歯科医師会や関連学会が示すガイドラインに基づいています。 ご自身の年齢や口腔内の状況に合わせて、適切なフッ素濃度の歯磨き粉を選び、正しい使用量を守って効果的な虫歯予防を実践しましょう。

5. 歯科医師が教える 安全なフッ素配合歯磨き粉の選び方

毎日使う歯磨き粉だからこそ、ご自身の口内環境やライフステージに合った製品を正しく選ぶことが、効果的な虫歯予防の第一歩です。数多くの製品の中から最適な一本を見つけるための3つのポイントを、歯科医師の視点から詳しく解説します。

5.1 ポイント1 年齢に合ったフッ素濃度で選ぶ

フッ素配合歯磨き粉を選ぶ上で最も重要なのが、年齢に適したフッ素濃度(ppm)の製品を選ぶことです。フッ素は虫歯予防に非常に有効な成分ですが、特に小さなお子様の場合は、誤って飲み込んでしまうリスクを考慮し、適切な濃度と使用量を守る必要があります。2023年1月に日本口腔衛生学会など4つの学会が合同で推奨量を改定し、より効果的な虫歯予防を目指す指針が示されました。 以下の表を目安に、製品のパッケージに記載されているフッ素濃度を確認しましょう。

年齢 推奨されるフッ素濃度 使用量の目安
歯の萌出後〜5歳 1000ppm 米粒〜グリーンピース大(年齢による)
6歳〜成人・高齢者 1500ppm 歯ブラシの毛先全体(約1.5cm〜2cm)

日本では、市販の歯磨き粉に配合できるフッ素濃度の上限は1500ppmと定められています。 特に6歳以上の方は、1500ppmに近い高濃度の製品を選ぶことで、より高い虫歯予防効果が期待できます。 一方、6歳未満のお子様には、高濃度フッ素配合製品の使用は控えるよう注意書きがあるため、必ず年齢に合った製品を選んであげてください。

5.2 ポイント2 低発泡・低研磨・低香味の製品を選ぶ

フッ素の効果を最大限に引き出し、かつ歯や歯茎に優しいケアを行うためには、「低発泡」「低研磨」「低香味」の3つのポイントを意識することが推奨されます。

5.2.1 低発泡

発泡剤が多く含まれている歯磨き粉は、少量でも口の中が泡でいっぱいになり、「しっかり磨けた」と錯覚しがちです。 しかし、実際には短時間でブラッシングを終えてしまい、磨き残しの原因となることがあります。泡立ちが少ない低発泡性の製品は、歯一本一本の状態を確認しながらじっくり時間をかけて丁寧に磨けるため、結果的にプラーク(歯垢)の除去率を高めることにつながります。

5.2.2 低研磨(研磨剤無配合)

研磨剤は歯の表面についた着色汚れ(ステイン)を落とす効果がありますが、粒子が粗いものや配合量が多い製品を使い続けると、歯の表面のエナメル質や、歯茎が下がって露出した象牙質を傷つけてしまう可能性があります。 特に知覚過敏の症状がある方や、歯の根元が露出している方は注意が必要です。歯や歯茎への負担を考えるなら、研磨剤無配合か低研磨性の製品が安心です。着色が気になる場合は、汚れを浮かせて落とす成分(例:ポリリン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール)が配合された製品を選ぶと良いでしょう。

5.2.3 低香味

ミントなどの香味があまりに強いと、その刺激から何度も口をゆすぎたくなります。しかし、フッ素の効果を最大限に引き出すためには、歯磨き後のうがいは少量の水で1回程度に留め、フッ素をできるだけ口の中に残すことが重要です。 マイルドな香味の製品を選ぶことで、歯磨き後の過度なうがいを防ぎ、フッ素を口の中に長くとどめることができます。

5.3 ポイント3 悩みに合わせた薬用成分で選ぶ

フッ素による虫歯予防に加えて、ご自身の口内の悩みに合わせた薬用成分が配合されている製品を選ぶことで、より効果的なオーラルケアが可能です。 歯磨き粉は法律上「化粧品」と「医薬部外品」に分類され、有効成分が配合されているのは「医薬部外品(薬用歯磨き粉)」です。 虫歯以外の悩みがある方は、パッケージの成分表示を確認し、自分に合った薬用成分が含まれた製品を選びましょう。

お悩み 代表的な薬用成分 期待される効果
歯周病予防(歯肉炎・歯槽膿漏) IPMP(イソプロピルメチルフェノール)、CPC(塩化セチルピリジニウム)、トラネキサム酸、ビタミンE(酢酸トコフェロール) 原因菌の殺菌、歯茎の炎症や出血を抑える、血行促進
知覚過敏 硝酸カリウム、乳酸アルミニウム 歯の神経への刺激伝達をブロックする
口臭予防 LSS(ラウロイルサルコシンNa)、CPC(塩化セチルピリジニウム)、銅クロロフィリンナトリウム、ゼオライト 口臭の原因菌を殺菌、臭いの元を吸着
着色汚れ(ステイン)除去 PEG(ポリエチレングリコール)、ポリリン酸ナトリウム タバコのヤニやコーヒーなどによる着色汚れを浮かせて除去する
歯石の沈着防止 ポリリン酸ナトリウム、ゼオライト 歯垢が硬い歯石になるのを防ぐ

これらのポイントを踏まえ、ご自身の年齢、お口の状態、そしてお悩みに合わせて歯磨き粉を選ぶことで、毎日の歯磨きをより効果的なものに変えることができます。もし製品選びに迷ったら、かかりつけの歯科医師や歯科衛生士に相談するのも良いでしょう。

6. フッ素の効果を最大化する歯磨き粉の正しい使い方

フッ素配合歯磨き粉は、ただ何となく使うだけではその効果を十分に発揮できません。毎日の歯磨きでフッ素の効果を最大限に引き出し、虫歯になりにくい強い歯を作るための具体的な使い方を解説します。

6.1 歯磨き粉を付ける前に歯ブラシを濡らさない

多くの方が習慣的に歯ブラシを水で濡らしてから歯磨き粉を付けていますが、フッ素の効果を高めるためには歯ブラシは濡らさずに使うのがおすすめです。先に歯ブラシを濡らしてしまうと、歯磨き粉がすぐに泡立ちすぎてしまい、短時間で磨いた気になってしまうことがあります。また、有効成分であるフッ素が唾液以外の水分で薄まってしまうことも防げます。乾いた歯ブラシに歯磨き粉を付けて、唾液の水分で自然に泡立たせながら、時間をかけて丁寧に磨きましょう。

6.2 歯磨き粉は歯全体に広げてから磨き始める

歯ブラシに歯磨き粉を付けたら、すぐに特定の歯から磨き始めるのではなく、まず歯磨き粉を全ての歯の表面に均等に行き渡らせることが重要です。これにより、フッ素が口内全体に広がり、特定の箇所だけでなく全ての歯に均一に作用させることができます。磨き始める前に、歯ブラシでペーストを上下の歯全体に軽く塗り広げるイメージで行いましょう。

6.3 歯磨き後のうがいは「少量の水で1回だけ」が基本

歯磨き後、口の中にできるだけ多くのフッ素を残すことが、虫歯予防効果を高める上で最も重要なポイントです。 何度も口をすすいでしまうと、せっかく歯に付着したフッ素が洗い流されてしまいます。 この方法は、予防歯科の先進国であるスウェーデンのイエテボリ大学で推奨されている「イエテボリ法」としても知られています。 具体的なうがいの方法は以下の通りです。

項目 推奨される方法(イエテボリ法) 一般的な方法
水の量 5〜15ml(ペットボトルのキャップ1〜2杯程度) コップ1杯程度
うがいの回数 1回のみ 2〜3回以上
うがいの時間 5秒程度、口全体に行き渡らせるように 特に意識しない
口内のフッ素残存量 多い 少ない

最初は口の中に歯磨き粉が残っている感覚に慣れないかもしれませんが、虫歯予防のためには非常に効果的な方法です。 どうしても気持ち悪い場合は、吐き出すだけでも構いません。

6.4 歯磨き後1〜2時間は飲食を控える

歯磨きで歯に行き渡ったフッ素が、歯の表面で再石灰化を促進したり、歯質を強化したりするためには一定の時間が必要です。 そのため、歯磨き後1〜2時間は飲食を控えるようにしましょう。 特に、唾液の分泌量が減って虫歯リスクが高まる就寝前の歯磨きの後は、何も口にしないことが理想的です。 この時間を確保することで、フッ素が歯にしっかりと作用し、虫歯に対する抵抗力を高めることができます。

6.5 フッ素配合の洗口液を併用する際の注意点

さらに虫歯予防効果を高めたい場合、フッ素配合の洗口液(マウスウォッシュ)を併用することも有効です。 ただし、使い方には順番があります。歯磨きで物理的にプラークを除去した後に使用するのが効果的です。

歯磨きをした後、30分〜1時間ほど時間を空けてから洗口液を使用するのがおすすめです。 これは、歯磨き直後に使用すると、歯磨き粉に含まれるフッ素を洗い流してしまう可能性があるためです。 就寝前の歯磨きの後にフッ素洗口液を使うことで、睡眠中の口内環境をより良く保つことができます。製品によって推奨される使用方法が異なる場合があるため、必ずパッケージの指示に従ってください。

7. まとめ

歯磨き粉のフッ素は「危険」というイメージがあるかもしれませんが、これは過剰摂取した場合のリスクを指します。推奨される使用量を守れば、フッ素は虫歯予防に極めて効果的で安全な成分です。歯の再石灰化を促し、歯質を強化する働きがあります。ご自身の年齢に合ったフッ素濃度の製品を選び、歯磨き後のうがいは少量の水で1回にするなど、正しい使い方を実践することで、フッ素の効果を最大限に引き出し、大切な歯を守りましょう。

札幌で矯正歯科を検討中の方は、ぜひ医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科でご相談ください。矯正治療のご相談をご希望の方は、下記のボタンよりお気軽にご予約ください。

この記事の監修者

尾立 卓弥(おだち たくや)

医療法人札幌矯正歯科 理事長
宮の沢エミル矯正歯科 院長

北海道札幌市の矯正専門クリニック「宮の沢エミル矯正歯科」院長。
日本矯正歯科学会 認定医。

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