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2025.11.03

デンタルフロスのやりすぎで歯茎が下がる?後悔する前に知りたい危険なサインと正しい使い方

デンタルフロスのやりすぎで歯茎が下がる?後悔する前に知りたい危険なサインと正しい使い方

デンタルフロスをする女性

こんにちは。医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科の理事長の尾立卓弥です。札幌で矯正歯科を検討中の方は、ぜひ医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科でご相談ください。毎日のデンタルフロス、良かれと思ったケアが逆に歯茎を傷つけ、歯茎下がりの原因になることがあります。この記事では、フロスのやりすぎによる出血や痛みといった危険なサイン、歯茎にダメージを与える3つの原因を解説。結論として、間違った使い方は歯茎トラブルに繋がります。もう後悔しないために、歯茎を傷つけないフロスの正しい使い方や頻度、選び方、万が一の対処法まで詳しくお伝えします。

目次

1. デンタルフロスのやりすぎで歯茎が下がるは本当か

「デンタルフロスをやりすぎると歯茎が下がる」という話を聞いて、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。結論から言うと、間違った方法でデンタルフロスを使い続けると、歯茎が下がる(歯肉退縮する)可能性は十分にあります。 しかし、これはフロスそのものが悪いわけではありません。むしろ、正しく使えば歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間のプラーク(歯垢)を効率的に除去し、歯周病を予防することで、歯茎の健康を守る非常に有効なツールです。 つまり、デンタルフロスが歯茎にとって味方になるか、敵になるかは「使い方次第」なのです。

1.1 結論:やり方次第で「本当」になる

デンタルフロスによる歯茎下がりは、不適切な使用によって歯茎に物理的なダメージが繰り返されることで起こります。 歯茎は非常にデリケートな組織であり、強すぎる力でフロスを押し付けたり、のこぎりのようにゴシゴシと激しく動かしたりすると、歯茎は傷つき、炎症を起こします。 このような刺激が日常的に続くと、歯茎は防御反応として少しずつ痩せて後退していき、結果として歯の根元が露出する「歯肉退縮」を引き起こしてしまうのです。 一方で、適切な力加減で歯の側面に沿わせて優しく動かせば、歯茎を傷つけることなくプラークのみを除去できるため、歯肉退縮の心配はほとんどありません。

1.2 歯茎が下がる「歯肉退縮」のメカニズム

歯肉退縮は、歯を支えている歯周組織が失われることで起こります。専門的には、歯と歯茎の付着(アタッチメント)が失われることを「アタッチメントロス」と呼びます。 デンタルフロスの誤った使用は、このアタッチメントロスを引き起こす原因の一つです。 強すぎる圧力や摩擦によって歯茎の細胞が破壊され、炎症が続くと、歯茎の辺縁が少しずつ根の方向へと下がっていきます。一度下がってしまった歯茎は、自然に元の状態に戻ることはほとんどありません。歯の根が露出すると、見た目が悪くなるだけでなく、知覚過敏や虫歯のリスクも高まります。

1.3 デンタルフロスの「やりすぎ」とは?3つのポイント

では、具体的にどのような使い方が「やりすぎ」に当たるのでしょうか。主に「力加減」「動かし方」「頻度」の3つのポイントが挙げられます。以下の表で、歯茎を傷つける「悪い例」と、歯茎を守る「良い例」を比較してみましょう。

ポイント 悪い例(やりすぎ) 良い例(適切)
力加減 フロスを歯間に入れる際に「パチン」と音がするほど強く押し込む。痛みを感じる。 指の力を抜き、優しく滑らせるように歯間に入れる。痛みは感じない。
動かし方 のこぎりのように前後に大きく、速く動かす。歯茎に何度もフロスが当たる。 歯の側面にCの字を描くように沿わせ、上下にゆっくりと数回動かす。
頻度 毎食後、一日に何度も力を入れて行う。出血しても気にせず続ける。 1日1回、就寝前など時間を決めて丁寧に行うのが目安。

もしご自身のフロスの使い方が「悪い例」に当てはまる場合は、すぐに改善が必要です。特に、フロスを歯茎に「パチン」とぶつけるように挿入する癖がある方は、歯茎に大きなダメージを与えている可能性がありますので、今日からでも優しい力加減を心がけてください。

2. これはやりすぎのサイン?歯茎が伝える危険信号

デンタルフロスは、歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間の歯垢(プラーク)を取り除くために非常に有効なオーラルケア用品です。しかし、良かれと思って行っているフロスが、誤った方法や過度な使用によって歯茎を傷つけてしまうことがあります。健康な歯茎は薄いピンク色で引き締まっていますが、これからご紹介するようなサインが見られたら、それは歯茎からの「やりすぎ」を知らせる危険信号かもしれません。日々のセルフチェックで、大切な歯茎の状態を確認しましょう。

2.1 歯茎からの出血が止まらない

デンタルフロスを使い始めたばかりの頃や、久しぶりに使った時に少量の出血が見られることがあります。これは、それまで溜まっていた歯垢によって歯茎が軽い炎症(歯肉炎)を起こしているためで、正しくケアを続けることで改善されることがほとんどです。 しかし、フロスを使うたびに毎回同じ場所から出血する、または出血がなかなか止まらない場合は注意が必要です。 これは、フロスを歯茎に強く当てすぎているか、不適切な角度で挿入して粘膜を傷つけている可能性があります。 歯周病が原因で出血することもありますが、まずはフロスの使い方を見直してみましょう。

2.2 フロスを使うたびに歯茎が痛む

フロスを使用した際に「チクッ」としたり、「ジンジン」したりする痛みを感じる場合も、やりすぎのサインです。 特に、フロスを歯と歯の間に入れる瞬間や、歯茎の溝(歯周ポケット)を掃除する際に鋭い痛みがある場合、力を入れすぎている可能性が高いでしょう。 歯茎は非常にデリケートな組織のため、強い力でフロスを押し込むと簡単に傷ついてしまいます。 痛みを感じることでフロスが億劫になってしまうと、本来の目的である歯垢除去ができなくなり、虫歯や歯周病のリスクを高めることにもなりかねません。

2.3 歯茎が赤く腫れている

健康な歯茎が薄いピンク色なのに対し、赤く充血していたり、ブヨブヨと腫れぼったくなっているのは炎症が起きている証拠です。 フロスによる過度な物理的刺激が、歯茎の炎症を引き起こしている可能性があります。 歯肉炎や歯周病でも同様の症状が見られますが、特定の箇所だけがフロスを使用した後に腫れるのであれば、その部分への力の入れすぎや間違った動かし方を疑うべきです。

2.4 歯が長くなったように見える歯肉退縮

「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」とは、歯茎がすり減って下がり、歯の根元部分が露出してしまう状態のことです。一度退縮してしまった歯茎は、残念ながら自然に元の状態に戻ることはありません。 これが、デンタルフロスのやりすぎで最も後悔につながりやすい危険なサインと言えます。強い力でのこぎりのようにゴシゴシとフロスを動かす習慣は、歯茎を徐々に削り取ってしまい、歯肉退縮の直接的な原因となります。 歯が長くなったように見えたり、冷たいものがしみる「知覚過敏」の症状が出たりした場合は、すでに歯肉退縮が進行している可能性があります。

これらの危険信号を見逃さないために、ご自身の歯茎の状態を日頃からチェックすることが重要です。以下の表でセルフチェックしてみましょう。

危険信号の種類 具体的な症状の例 考えられるフロスの問題点
出血 フロス使用後、数分たっても血がにじむ。毎回必ず同じ場所から出血する。 歯茎への力の入れすぎ、フロスを突き刺している。
痛み フロスが歯茎に触れるたびに鋭い痛みが走る。使用後もジンジンとした痛みが残る。 歯茎に強く押し付けている。のこぎりのように動かしている。
腫れ・赤み 歯と歯の間の歯茎が赤く腫れあがり、丸みを帯びている。 過度な物理的刺激による炎症。
歯肉退縮 以前より歯が長くなったように見える。歯の根元が露出してきた。冷たいものがしみる。 長期間にわたる強すぎる力でのフロス使用。

3. なぜデンタルフロスのやりすぎが歯茎に悪いのか3つの原因

デンタルフロスは歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間の歯垢(プラーク)を取り除くために非常に効果的なツールです。 しかし、良かれと思って行っているケアも、方法を間違えると歯茎を傷つけ、歯肉退縮などのトラブルを引き起こす原因になりかねません。 ここでは、デンタルフロスの「やりすぎ」がなぜ歯茎に悪影響を及ぼすのか、その主な3つの原因を詳しく解説します。

原因 具体的なNG行動 歯茎への悪影響
強すぎる力加減 フロスを歯茎に「バチンッ」と音を立てて通したり、強く押し付けたりする。 歯茎の組織を直接傷つけ、出血や炎症、歯肉退縮(歯茎下がり)を引き起こす。
間違った動かし方 歯間にフロスを通した後、のこぎりのように前後にギコギコと動かす。 歯の側面だけでなく、デリケートな歯と歯の間の歯茎(歯肉乳頭)をすり減らしてしまう。
過剰な頻度 1日に何度も、特に力を入れてフロスを使用する。 歯茎が回復する時間を与えず、慢性的な刺激によって炎症や歯肉退縮を招く。

3.1 原因1 強すぎる力加減

最も多い間違いが、力任せにフロスを歯茎に押し付けてしまうことです。 歯と歯の間にフロスを挿入する際、「バチンッ」と音を立てて無理やり通していませんか?その衝撃は、デリケートな歯茎の組織を直接傷つけてしまいます。 健康な歯茎は歯と歯の間に隙間なく存在していますが、強すぎる力で圧迫し続けると、その部分の血流が悪くなり、炎症や出血の原因となります。 このような物理的なダメージが毎日繰り返されると、歯茎は少しずつすり減り、最終的には歯の根元が露出する「歯肉退縮」を引き起こしてしまうのです。

3.2 原因2 のこぎりのような間違った動かし方

フロスを歯と歯の間に通した後、のこぎりのように前後にゴシゴシと動かす「のこぎり引き」も歯茎を傷つける典型的なNG行動です。 この動かし方は、歯の側面を清掃する上で効率が悪いだけでなく、歯と歯の間の三角形の歯茎(歯肉乳頭)を削り取ってしまう危険性があります。 歯肉乳頭は一度失われると、元の形に再生することは非常に困難です。この部分が失われると、歯の間に黒い三角形の隙間(ブラックトライアングル)ができてしまい、見た目の問題だけでなく、食べ物が詰まりやすくなる原因にもなります。フロスは歯の表面に付着した歯垢を「掻き出す」ものであり、歯茎を「こする」ものではないことを理解することが重要です。

3.3 原因3 1日に何度も行う過剰な頻度

デンタルフロスの適切な使用頻度は、基本的に1日1回、就寝前の丁寧なケアが推奨されています。 もちろん、食事の後に食べ物が挟まって気持ち悪い時には、その都度使用しても問題ありません。 しかし、汚れを落としたいという意識が強すぎるあまり、1日に何回も力を込めてフロスを行うのは逆効果です。 歯茎も皮膚と同じように、傷つけば回復するための時間が必要です。過度な頻度で刺激を与え続けると、歯茎は常に軽い炎症状態となり、回復が追いつかずに少しずつ退縮してしまう可能性があります。プラーク(歯垢)が固い歯石に変わるには時間がかかるため、回数を増やすことよりも、1日1回のケアを正しく丁寧に行うことの方がはるかに重要です。

4. もう歯茎を傷つけないデンタルフロスの正しい使い方

デンタルフロスは、歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間のプラーク(歯垢)を取り除くために非常に効果的なツールです。しかし、使い方を誤ると歯茎を傷つけ、歯肉退縮の原因にもなりかねません。ここで紹介する正しい知識と手順をマスターすれば、歯茎を傷つける心配なく、デンタルフロスの効果を最大限に引き出すことができます

4.1 基本的なフロスの手順

デンタルフロスには大きく分けて「ロールタイプ」と「ホルダータイプ」がありますが、ここでは基本的な「ロールタイプ」の使い方をステップごとに解説します。ホルダータイプも基本的な動かし方は同じです。

  1. フロスを適切な長さに切る
    フロスを約40cm(指先からひじまで)の長さに引き出して切ります。少し長いと感じるかもしれませんが、歯を一つひとつ清掃する際に、常に清潔な部分を使えるようにするためにはこのくらいの長さが必要です。
  2. 指に巻きつける
    両手の中指に、フロスがピンと張るように数回巻きつけます。このとき、フロスを操作するために両手の親指と人差し指が自由に使えるように、指と指の間隔が1〜2cmになるように調整します。
  3. ゆっくりと歯の間に挿入する
    鏡を見ながら、フロスを歯と歯の間に当て、のこぎりを引くようにゆっくりと前後に動かしながら挿入します。 力を入れて「パチン」と音を立てて挿入するのは絶対にやめましょう。勢いよく入れると歯茎に突き刺さり、傷つける大きな原因となります。
  4. 歯の側面に沿わせて汚れを掻き出す
    フロスを歯の側面に「C」の字を描くように巻きつけ、歯と歯茎の境目にある溝(歯周ポケット)に少しだけ入れます。 そして、歯の面に沿わせながら上下に数回動かし、プラークを優しく掻き出します。 片方の歯が終わったら、隣り合ったもう片方の歯の側面も同様に清掃します。
  5. 清潔な部分を使って次の歯へ
    一つの歯間を清掃し終えたら、指に巻きつけたフロスを少しずらし、まだ使っていない清潔な部分を出して、次の歯の清掃に移ります。すべての歯間をこの手順で清掃していきます。
  6. ゆっくりと取り出す
    清掃が終わったら、挿入した時と同様に、ゆっくりと前後に動かしながらフロスを歯の間から取り出します。

4.2 あなたの歯に合うデンタルフロスの選び方

デンタルフロスには様々な種類があり、ご自身の歯の状態や使いやすさに合わせて選ぶことが大切です。 主に「ホルダータイプ」と「ロールタイプ」の2種類に分けられます。 それぞれの特徴を理解し、自分にぴったりのフロスを見つけましょう。

4.2.1 初心者でも簡単なホルダータイプ

プラスチック製の持ち手(ホルダー)にフロスが張られているタイプで、「糸ようじ」としても知られています。 手を大きく口に入れなくても操作しやすく、デンタルフロスを初めて使う方や、手先で細かい作業をするのが苦手な方におすすめです。

ホルダータイプは、主に前歯に使いやすい「F字型」と、奥歯にも届きやすい「Y字型」があります。 可能であれば、場所によって使い分けるのが理想的です。

ホルダータイプの種類と特徴
種類 形状 主な使用箇所 特徴
F字型 持ち手に対してフロスが平行に張られている 前歯 前歯の歯間に挿入しやすく、操作が簡単。
Y字型 持ち手に対してフロスが垂直方向に張られている 奥歯・前歯 F字型では届きにくい奥歯の歯間にも楽に挿入できる。

4.2.2 しっかりケアしたい人向けのロールタイプ

必要な長さを自分で切り取り、指に巻きつけて使用する伝統的なタイプです。慣れるまで少し練習が必要ですが、常に新しい清潔な部分でケアできるため衛生的で、コストパフォーマンスにも優れています。 糸の素材や加工によっていくつかの種類があり、自分の歯の状態に合わせて選べます。

ロールタイプの主な種類と特徴
種類 特徴 おすすめな人
ワックスタイプ 糸がワックスでコーティングされており、滑りが良い。 初心者、歯と歯の間が狭い人、詰め物が多い人。
アンワックス(ノンワックス)タイプ ワックス加工がなく、繊維が広がりやすい。プラークを絡め取る効果が高い。 フロスに慣れている人、より高い清掃効果を求める人。
エキスパンド(スポンジ)タイプ 唾液などの水分を含むとスポンジ状に膨らむ特殊な繊維。 歯の側面にフィットしやすく、歯茎に優しい。 歯茎が敏感な人、歯と歯の間の隙間が広めの人。

4.3 デンタルフロスの最適な頻度とタイミング

デンタルフロスは、その効果を最大限に引き出すために、適切な頻度とタイミングで行うことが重要です。

頻度:最低でも1日1回
デンタルフロスは、最低でも1日1回行うことが推奨されています。 歯ブラシでは落としきれない歯間のプラークは、約48時間で硬化し始めると言われており、毎日取り除くことが虫歯や歯周病の予防につながります。 1日に何度もやりすぎると歯茎を傷つける可能性があるため、1回1回を丁寧に行うことを心がけましょう。

タイミング:就寝前の歯磨き時がベスト
最も効果的なタイミングは、就寝前の歯磨きの時です。 就寝中は唾液の分泌量が減少し、お口の中で細菌が繁殖しやすくなるため、寝る前に歯間のプラークを徹底的に除去しておくことが非常に重要です。

また、歯磨きの「前」と「後」どちらに行うかについては、「歯磨き前」がおすすめです。 先にフロスで歯間の大きな汚れやプラークを掻き出しておくことで、その後の歯磨きで汚れを効率的に除去できるだけでなく、歯磨き粉に含まれるフッ素などの薬用成分が歯の隅々まで行き渡りやすくなるというメリットがあります。 複数の研究でも、フロスを先に行った方が歯垢の除去率が高まるという結果が報告されています。

5. やりすぎて歯茎を傷つけてしまった時の対処法

デンタルフロスを頑張りすぎた結果、歯茎から血が出たり痛みを感じたりすると、「もうフロスを使うのが怖い」と感じてしまいますよね。しかし、そこでセルフケアを中断してしまうのは早計です。まずは落ち着いて適切な対処を行い、症状が改善しない場合は速やかに専門家の助けを借りましょう。

5.1 まずは落ち着いて!自宅でできる応急処置

フロスの使用直後に歯茎を傷つけてしまったと感じたら、以下の応急処置を試してみてください。パニックにならず、歯茎を安静にさせることが重要です。

5.1.1 1. いったんフロスの使用を中止する

最も大切なのは、傷ついた歯茎をさらに刺激しないことです。出血や痛みがある場合は、その部分へのフロスの使用を2〜3日程度中止し、歯茎の様子を見ましょう。傷が治る前に同じようにフロスを当ててしまうと、治癒を妨げ、症状を悪化させる原因になりかねません。

5.1.2 2. ぬるま湯で優しく口をすすぐ

口の中に血の味が広がり不快な場合は、ぬるま湯で優しく口をすすぎましょう。冷たすぎる水や熱いお湯は、傷ついた歯茎への刺激となる可能性があるため避けてください。うがい薬を使いたい場合は、アルコール成分の少ない低刺激性のものを選ぶと良いでしょう。

5.1.3 3. 刺激の強い食べ物や飲み物を避ける

歯茎が傷ついている間は、香辛料が多く使われた辛い食べ物、酸味の強いもの、硬い食べ物などは避けましょう。傷口にしみたり、物理的な刺激になったりすることがあります。治るまでは、おかゆやスープなど、あまり噛まなくても食べられる柔らかい食事がおすすめです。

5.2 症状が続く場合に考えられることとセルフケア

応急処置をしても症状が改善しない場合は、フロスの使い方だけでなく、歯茎自体に問題が隠れている可能性も考えられます。

5.2.1 歯茎の出血や痛みが2〜3日続く場合

フロスのやりすぎによる一時的な傷であれば、通常2〜3日で症状は落ち着きます。もし出血や痛みが続くようであれば、歯肉炎など歯茎の炎症が原因かもしれません。この場合、出血を怖がって歯磨きを怠ると、原因であるプラーク(歯垢)がさらに溜まり、症状が悪化する悪循環に陥ります。 毛先の柔らかい歯ブラシを選び、歯と歯茎の境目を優しくマッサージするように磨いてください。フロスを再開する際は、力を入れずにゆっくりと歯の側面に沿わせて動かすことを徹底しましょう。

5.2.2 歯茎の腫れが引かない場合

歯茎が赤く腫れて熱を持っているような感覚がある場合は、炎症が起きているサインです。清潔なタオルで包んだ保冷剤などを頬の外側から優しく当てて冷やすと、症状が和らぐことがあります。ただし、氷などを直接歯茎に当てるのは刺激が強すぎるため避けてください。

5.3 【重要】歯科医院を受診すべき症状の目安

セルフケアで改善が見られない、または以下のような症状が現れた場合は、自己判断で放置せず、必ず歯科医院を受診してください。フロスのやりすぎがきっかけになっただけで、背景に歯周病などの問題が隠れている可能性があります。

症状 緊急度 考えられる状態
出血が1週間以上続く 歯周病が進行している可能性があります。
何もしなくてもズキズキと強く痛む 歯茎の内部で炎症が強く起きている、または神経に問題が起きている可能性があります。
歯茎がブヨブヨして膿が出ている 歯周病がかなり進行しているか、歯の根の先に膿が溜まっている(歯根嚢胞)可能性があります。
歯がグラグラと動く 歯を支える骨が溶かされている重度の歯周病が疑われます。
歯茎が明らかに下がり、歯が長くなったように見える 誤ったセルフケアによる歯肉退縮の可能性があります。一度下がった歯茎は自然には元に戻りません。

5.4 歯科医院で行われる治療の一例

歯科医院では、まず歯茎の状態を正確に診断し、原因に応じた治療を行います。フロスで傷つけてしまったと正直に伝えることで、より的確な診断とアドバイスにつながります。

5.4.1 歯石除去(スケーリング)

歯茎の炎症の多くは、歯垢が硬化した歯石が原因です。専用の器具を使って歯石を除去し、プラークが付きにくい清潔な状態に戻します。

5.4.2 ブラッシング・フロス指導

自己流のケアで歯茎を傷つけてしまっている場合が非常に多いため、歯科衛生士による専門的な指導が行われます。あなたのお口の状態に合った歯ブラシの選び方や、デンタルフロスの正しい使い方を改めて学ぶことができます。

5.4.3 投薬治療

炎症や痛みが強い場合には、抗菌薬や消炎鎮痛剤が処方されることがあります。これにより、急性の症状を和らげることができます。

6. デンタルフロス以外で歯茎が下がるケース

デンタルフロスの使いすぎは歯茎を傷つける一因となりますが、歯茎が下がる「歯肉退縮」の原因はそれだけではありません。むしろ、これからご紹介する原因の方が、歯肉退縮に大きく関わっているケースが多く見られます。ご自身の口腔ケアや生活習慣を振り返り、当てはまるものがないか確認してみましょう。

6.1 歯周病の進行

歯茎が下がる最も一般的な原因は、歯周病です。 歯周病は、歯と歯茎の境目に溜まった歯垢(プラーク)に含まれる細菌によって引き起こされる感染症です。 初期段階では歯茎が腫れたり出血したりする「歯肉炎」ですが、進行すると歯を支える顎の骨(歯槽骨)が溶かされてしまう「歯周炎」へと悪化します。 歯槽骨が溶けると、その上にある歯茎も一緒に下がってしまうのです。 歯周病は自覚症状が少ないまま進行することが多いため、気づいた時には深刻な状態になっていることも少なくありません。

歯周病の進行段階と主な症状
段階 主な症状 歯茎と骨の状態
歯肉炎(初期) 歯磨き時の出血、歯茎の赤みや腫れ 炎症は歯茎に限定され、歯槽骨の破壊はない
歯周炎(進行期) 口臭、歯が長くなったように見える、歯茎から膿が出る、歯がぐらつく 歯槽骨が破壊され始め、それに伴い歯茎も下がる

詳しくは、厚生労働省のe-ヘルスネットや日本臨床歯周病学会のウェブサイトで詳細な情報を確認できます。

6.2 不適切な歯磨き(オーバーブラッシング)

歯をきれいにしたいという思いから、強すぎる力でゴシゴシと歯を磨く「オーバーブラッシング」も歯茎下がりを引き起こす大きな原因です。 硬い歯ブラシを使ったり、研磨剤の多い歯磨き粉を多量に使用したりすることも、歯茎を物理的に傷つけ、すり減らしてしまいます。 このような間違ったブラッシングを続けると、歯茎が傷つき、徐々に退縮してしまうのです。

6.2.1 避けるべき歯磨きの特徴

  • 歯ブラシの毛先がすぐに開いてしまう
  • 力を入れないと磨いた気がしない
  • 歯磨き中に歯茎がヒリヒリと痛む
  • 「かため」の歯ブラシを好んで使っている

適切なブラッシング圧は、歯ブラシの毛先が広がらない程度の軽い力です。一度、歯科医院でブラッシング指導を受け、ご自身に合った磨き方を身につけることをお勧めします。

6.3 噛み合わせの不調和や歯ぎしり・食いしばり

特定の歯にだけ過度な力がかかるような悪い噛み合わせや、睡眠中・日中の無意識な歯ぎしり・食いしばりも歯茎にダメージを与えます。 これらの癖は、歯を支える歯槽骨に継続的な負担をかけ、骨の吸収を引き起こすことがあります。 骨が痩せてしまうと、結果的に歯茎も下がってしまいます。特に、日中に無意識に上下の歯を接触させる癖(TCH:Tooth Contacting Habit)は自覚しにくいため注意が必要です。

6.4 矯正治療に伴う歯の移動

歯並びを整えるための矯正治療も、歯肉退縮のリスク要因となる場合があります。 歯を動かす過程で、歯を支える骨や歯茎が薄くなることがあり、特に元々歯茎が薄い方や、歯を大きく動かす必要がある場合にそのリスクが高まります。 これは矯正治療に伴う副作用の一つであり、必ず起こるわけではありません。 治療前に歯科医師とリスクについて十分に話し合うことが重要です。日本矯正歯科学会のウェブサイトでは、矯正治療に関する詳しい情報や認定医を探すことができます。

6.5 その他の要因

6.5.1 加齢による生理的変化

年齢を重ねるにつれて、身体の他の部分と同様に歯茎も少しずつ下がってくることがあります。 これは生理的な変化であり、ある程度は避けられない側面もありますが、適切なオーラルケアでその進行を緩やかにすることは可能です。

6.5.2 生活習慣(喫煙など)や遺伝

喫煙は血行を悪化させ、歯茎の健康を損なう大きなリスク因子です。 また、歯周病へのかかりやすさなど、遺伝的な要因が関与することもあります。 ホルモンバランスの変化なども歯茎の状態に影響を与えることが知られています。

7. 医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科での対応

デンタルフロスの使いすぎによる歯茎のトラブルでお悩みの方が、当院のサイトをご覧になっているかもしれません。特に、歯並びを整える矯正治療中は、装置の周りに汚れが溜まりやすくなるため、デンタルフロスをはじめとする丁寧なセルフケアが非常に重要になります。しかし、良かれと思って行っているケアが、方法を誤ることでかえって歯茎を傷つけてしまうケースも少なくありません。

当院は、歯並びや噛み合わせを専門とする矯正歯科医院です。そのため、デンタルフロスのやりすぎによって生じた歯茎下がり(歯肉退縮)や歯周病の直接的な治療は行っておりません。しかし、患者様のお口の健康をトータルでサポートするため、信頼できる専門の歯科医院と密に連携しております。

7.1 当院は矯正歯科専門のため提携先の歯科医院をご紹介します

歯茎からの出血、痛み、腫れ、あるいは「歯が長くなったように見える」といった歯肉退縮の症状が見られる場合、まずはその原因を正確に突き止めることが大切です。これらの症状は、フロスの使いすぎだけでなく、歯周病が原因である可能性も考えられます。自己判断で放置してしまうと、症状が悪化し、最悪の場合、歯を支える骨が溶けてしまう危険性もあります。

当院にご相談いただいた際には、まずお口の中の状態を丁寧に拝見し、症状に応じて最適な一般歯科や歯周病専門医をご紹介させていただきます。特に矯正治療中、あるいはこれから矯正治療をお考えの方には、治療計画と連携しながらサポートできる歯科医院をご案内いたしますのでご安心ください。

7.1.1 お悩みの症状とご紹介先の目安

患者様のお悩みの症状に合わせて、どのような専門性を持つ歯科医院が適しているか、以下の表にまとめました。ご自身の状況と照らし合わせて、参考にしてください。

症状別にご紹介する診療科の目安
お悩みの症状 ご紹介する診療科 主な治療や指導の内容
フロスによる一時的な出血や軽い痛み 一般歯科・予防歯科 ・正しいブラッシング指導(TBI)
・デンタルフロスの正しい使い方指導
・歯のクリーニング(PMTC)
継続的な出血、歯茎の赤みや腫れ 一般歯科・歯周病科 ・歯周ポケットの深さの検査
・レントゲン撮影による骨の状態の確認
・歯石除去(スケーリング・ルートプレーニング)
歯が長くなった、しみる(歯肉退縮) 歯周病科・専門医 ・歯肉退縮の原因診断
・知覚過敏の処置
・歯周組織再生療法や歯肉移植術などの外科的治療の検討

7.1.2 矯正治療中の患者様へ

ワイヤー矯正やマウスピース矯正(インビザラインなど)の治療中は、装置によってフロスが使いにくくなることがあります。当院では、矯正治療中の患者様一人ひとりのお口の状態に合わせて、矯正装置に適したフロスの種類(スーパーフロスなど)や、通しやすいツールの使い方を具体的に指導しております。フロスの使い方に少しでも不安や疑問があれば、遠慮なくご相談ください。矯正治療をスムーズに進め、健康的で美しい口元を実現するためには、日々の正しいセルフケアが不可欠です。

歯茎の問題は、早期発見・早期対応が何よりも重要です。デンタルフロスに関するお悩みはもちろん、矯正治療中の口腔ケアについてのご相談も、いつでもお受けしております。

8. まとめ

デンタルフロスは、正しい使い方をすれば虫歯や歯周病予防に効果的ですが、やりすぎは歯茎下がりなどのトラブルを招く危険性があります。強すぎる力や間違った動かし方、過剰な頻度は歯茎を傷つける主な原因です。出血や痛みなどのサインを見逃さず、ご自身に合ったフロスで優しくケアすることが大切です。もし歯茎に異常を感じたら、早めに歯科医院へ相談しましょう。

札幌で矯正歯科を検討中の方は、ぜひ医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科でご相談ください。矯正治療のご相談をご希望の方は、下記のボタンよりお気軽にご予約ください。

この記事の監修者

尾立 卓弥(おだち たくや)

医療法人札幌矯正歯科 理事長
宮の沢エミル矯正歯科 院長

北海道札幌市の矯正専門クリニック「宮の沢エミル矯正歯科」院長。
日本矯正歯科学会 認定医。

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