矯正歯科が虫歯を教えてくれない3つの理由|放置は危険?
こんにちは。医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科の理事長の尾立卓弥です。札幌で矯正歯科を検討中の方は、ぜひ医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科でご相談ください。矯正歯科で虫歯を教えてくれないと「見落とし?」「放置して大丈夫?」と不安になりますよね。矯正歯科が虫歯を指摘しないのには、専門分野の違いや装置で見えにくい、治療不要な初期段階と判断している、といった理由があります。この記事では、その理由と虫歯を放置するリスク、見つかった際の正しい対処法から予防策まで解説します。矯正中の歯の健康を守り、安心して治療を進めるための知識がわかります。
1. 矯正歯科が虫- 歯を教えてくれないのはなぜ?考えられる3つの理由
矯正治療中に、「虫歯があるのに指摘されない」「自分で虫歯を見つけたのに、先生は何も言ってくれない」と不安に感じた経験はありませんか?矯正歯科が虫歯をすぐに教えてくれないのには、いくつかの理由が考えられます。決して見落としているわけではなく、歯科医師としての専門性に基づいた判断や、物理的な問題が関係している場合がほとんどです。
ここでは、矯正歯科が虫歯を教えてくれない場合に考えられる3つの主な理由について、詳しく解説していきます。
1.1 理由1 専門分野が違うため(役割分担)
歯科医師と一括りにいっても、実はそれぞれに得意な専門分野があります。矯正歯科医は「歯並びや噛み合わせを整える専門家」であり、虫歯や歯周病の治療を主に行う「一般歯科医」とは役割が異なります。 もちろん、矯正歯科医も歯科医師免許を持っているため虫歯の診断や治療は可能ですが、より質の高い医療を提供するために、それぞれの専門性を活かした役割分担が行われているのが一般的です。日本矯正歯科学会の認定医をお探しの方は、こちらから検索してください。
矯正歯科医は、矯正治療の計画立案や装置の調整に集中し、虫歯治療が必要だと判断した場合は、かかりつけの一般歯科や連携している歯科医院を紹介するケースが多く見られます。 このように、それぞれの専門家が連携して患者さんのお口の健康を総合的にサポートする体制がとられているのです。
診療科 | 主な役割 | 具体的な治療内容 |
---|---|---|
矯正歯科 | 歯並び・噛み合わせの改善 | ワイヤー矯正、マウスピース矯正、顎の成長のコントロールなど |
一般歯科 | 虫歯・歯周病などの治療と予防 | 虫歯治療(詰め物・被せ物)、歯周病治療、抜歯、入れ歯、定期検診など |
1.2 理由2 矯正装置によって虫歯が見えにくいため
矯正治療中は、歯の表面にブラケットやワイヤーといった複雑な装置が装着されます。 これらの装置が、虫歯を発見する際の物理的な障害となることがあります。特に、装置のすき間や歯と歯が重なっている部分は死角となり、視診だけでは初期の虫歯を見つけるのが困難になるのです。
また、レントゲン撮影で虫歯を確認しようとしても、金属製の矯正装置が写り込んでしまい、正確な診断が難しい場合もあります。マウスピース型矯正の場合でも、歯に「アタッチメント」と呼ばれる突起物を付けることがあり、その周辺は汚れが溜まりやすく、虫歯のチェックがしにくい箇所となります。 このように、矯正装置の存在が虫歯の早期発見を妨げる一因となっているのです。
1.3 理由3 治療が不要な初期虫歯と判断しているため
「虫歯=すぐに削って治療が必要」というわけではありません。ごく初期の虫歯は「C0(シーオー)」と呼ばれ、歯の表面のエナメル質が溶け始めているものの、まだ穴が開いていない状態を指します。 この段階の虫歯は、痛みなどの自覚症状もありません。
C0の段階であれば、フッ素入りの歯磨き粉を使ったり、丁寧なブラッシングを続けたりすることで、唾液の力によって歯の表面が修復(再石灰化)され、自然に治癒する可能性があります。 そのため、矯正歯科医がC0を発見した場合、すぐに治療が必要な危険な状態ではないと判断し、「要経過観察」としてあえて詳しく伝えないことがあります。 患者さんにとっては「教えてくれない」と感じるかもしれませんが、歯科医師としては「削る必要のない歯を温存する」という重要な判断をしているのです。
2. 矯正歯科で虫- 1- 虫歯を教えてくれない状況を放置する5つのリスク
矯正歯科で虫歯を指摘されないからといって、安心はできません。万が一、虫歯が隠れていて放置してしまうと、矯正治療そのものに影響を及ぼす深刻な事態に発展する可能性があります。 ここでは、虫歯を放置することで起こりうる5つの具体的なリスクについて詳しく解説します。
2.1 リスク1 虫歯が進行して強い痛みが出る
矯正装置が付いていると、初期の虫歯は痛みなどの自覚症状がほとんどありません。 しかし、それを放置すると虫歯は歯の表面のエナメル質から内部の象牙質へと進行し、冷たいものや甘いものがしみるようになります。 さらに進行して歯の神経(歯髄)にまで達すると、何もしなくてもズキズキと脈打つような激しい痛みに悩まされることになります。 この段階になると、痛み止めが効きにくくなることも少なくありません。 矯正装置による痛みなのか虫歯による痛みなのか判断がつきにくく、発見が遅れるケースもあるため注意が必要です。
2.2 リスク2 神経を抜く治療(根管治療)が必要になる
虫歯が歯の神経まで達し、強い炎症(歯髄炎)を起こすと、その神経を取り除く「根管治療」が必要になります。 根管治療とは、感染した神経や血管を除去し、歯の根の中を徹底的に洗浄・消毒してから薬剤を詰める治療です。 この治療は非常に精密で時間がかかり、治療回数が複数回にわたることが一般的です。 神経を抜いた歯は、血液の供給がなくなるため、もろくなって将来的に割れやすくなる(歯根破折)リスクも高まります。
2.3 リスク3 抜歯が必要になり矯正計画が変更になる
根管治療でも歯を救えないほど虫歯が重症化し、歯の根の先まで細菌感染が広がったり、歯の大部分が崩壊してしまったりした場合は、抜歯を選択せざるを得ません。 矯正治療は、すべての歯が揃っていることを前提に精密な計画を立てています。そのため、計画外の抜歯は、治療計画を根本から見直すことにつながります。 特に、歯を動かす際の固定源として重要な役割を担う奥歯などを失うと、計画の再立案が必要となり、治療方針が大きく変わってしまう可能性があります。
2.4 リスク4 矯正治療が中断・長期化する
矯正治療中に虫歯が見つかった場合、原則として虫歯治療が優先されます。 特に、神経の治療や抜歯といった大掛かりな処置が必要になると、一時的に矯正装置を外さなければならないケースも出てきます。 治療が中断している間は、当然ながら歯を動かすことはできません。それだけでなく、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起こる可能性もあり、これまでの治療期間が無駄になってしまうことさえあります。 結果として、当初の予定よりも治療期間が数ヶ月から1年以上も延長されることは珍しくありません。
2.5 リスク5 虫歯治療のための追加費用が発生する
矯正治療費は、基本的に歯を動かして歯並びを整えるための費用です。そのため、矯正期間中に発生した虫歯の治療費は別途必要になります。虫歯の進行度によって治療内容と費用は大きく異なり、放置すればするほど高額な費用がかかる傾向にあります。
虫歯の進行度 | 主な治療内容 | 費用の目安(保険適用3割負担の場合) |
---|---|---|
初期虫歯(C1〜C2) | レジン充填(白い詰め物) | 約2,000円~5,000円 |
神経に達した虫歯(C3) | 根管治療+土台+被せ物 | 約10,000円~20,000円+被せ物の費用 |
歯の根だけが残った状態(C4) | 抜歯+ブリッジ、入れ歯、インプラントなど | 抜歯費用(約1,000円~5,000円)+補綴治療の費用(数万円~数十万円) |
特に、抜歯後にインプラントなどの自費診療を選択した場合、数十万円単位の追加費用が発生する可能性があり、経済的な負担は非常に大きくなります。
3. 矯正中に虫歯が見つかった時の正しい対処法
矯正治療中に「もしかして虫歯かも?」と気づいた時、あるいは他の歯科医院で虫歯を指摘された時、どうすれば良いか分からず不安になりますよね。しかし、慌てて自己判断で行動するのは禁物です。適切な手順を踏むことで、矯正治療への影響を最小限に抑えながら、虫歯をしっかりと治療することができます。ここでは、万が一の時に備えて知っておきたい正しい対処法をステップごとに詳しく解説します。
3.1 まずは矯正歯科の担当医に相談する
虫歯の疑いに気づいたら、何よりも先に、現在通っている矯正歯科の担当医に相談してください。痛みがないからといって放置したり、矯正歯科に内緒で一般歯科を受診したりすることは、後のトラブルにつながる可能性があるため絶対に避けましょう。
矯正歯科医は、あなたの歯並び全体の治療計画を管理している専門家です。まずは以下の情報を正確に伝えましょう。
- いつから、どの歯に、どのような症状(痛み、しみる、見た目の変化など)があるか
- 虫歯かもしれないと思った具体的なきっかけ
- かかりつけの一般歯科があるかどうか
担当医は、矯正装置が付いている状態での歯の状況を最もよく理解しています。視診や問診を通して、緊急性の高い虫歯なのか、あるいは経過観察が可能な初期段階の虫歯なのかを判断し、最適な次のステップを指示してくれます。また、必要に応じて連携している一般歯科を紹介してくれることもあります。
3.2 一般歯科を受診して精密検査と治療を受ける
矯正歯科医への相談後、多くの場合、虫歯の精密な検査と治療のために一般歯科を受診するように指示されます。矯正歯科は歯並びを整えることを専門とし、虫歯治療に必要なレントゲン設備や材料を揃えていないことが多いため、それぞれの専門家が連携して対応するのが一般的です。
一般歯科を受診する際は、必ず「現在、歯科矯正治療中である」ことを伝えましょう。矯正中であることを伝えることで、以下のような配慮をしてもらえます。
- 矯正装置(ブラケットやワイヤー)に影響を与えないような治療方法の選択
- 詰め物や被せ物の材質・形状が、今後の歯の移動を妨げないように考慮
- 矯正装置周辺の清掃状態の確認と、より効果的なセルフケア方法のアドバイス
一般歯科では、レントゲン撮影などを用いて虫歯の深さや広がりを正確に診断し、最適な治療計画を立ててくれます。
3.2.1 矯正歯科からの紹介状があるとスムーズ
矯正歯科の担当医に相談した際、一般歯科宛ての紹介状(診療情報提供書)を書いてもらえるか確認しましょう。紹介状があれば、あなた自身がこれまでの経緯を細かく説明する手間が省けるだけでなく、歯科医師間の情報伝達が正確かつスムーズになり、多くのメリットがあります。
項目 | 紹介状がある場合 | 紹介状がない場合 |
---|---|---|
情報伝達 | 矯正治療の計画や現在の状況が正確に伝わり、治療が円滑に進む。 | 患者さん自身が口頭で説明する必要があり、情報が不十分になる可能性がある。 |
医院間の連携 | 矯正歯科と一般歯科の連携が取りやすく、一貫性のある治療を受けられる。 | 連携がスムーズにいかず、治療方針の確認に時間がかかることがある。 |
治療計画の立案 | 矯正治療への影響を最大限考慮した、最適な虫歯治療計画を立てやすい。 | 矯正に関する情報が不足し、限定的な視点での治療計画になる可能性がある。 |
紹介状は、矯正歯科と一般歯科をつなぐ重要な架け橋となります。可能であれば、必ず用意してもらうようにしましょう。
3.2.2 治療内容を矯正歯科医と共有する
一般歯科での虫歯治療が無事に終わっても、それで終わりではありません。どのような治療を受けたのかを、必ず矯正歯科の担当医に報告・共有することが非常に重要です。
なぜなら、虫歯治療の内容によっては、今後の矯正計画に影響が出る可能性があるからです。例えば、
- 歯の形が大きく変わるような大きな詰め物・被せ物を入れた場合
- やむを得ず神経を抜く治療(根管治療)を行った場合
- 残念ながら抜歯に至った場合
これらの治療によって、当初の計画通りに歯が動かなくなることや、矯正装置の再調整が必要になることがあります。一般歯科で治療内容を記載した報告書やお口の中の写真などをもらい、次の矯正歯科の予約日に持参すると、より正確に情報を共有できます。歯科医師同士がしっかりと連携し、お口全体の健康を管理していく意識を持つことが、矯正治療と虫歯治療の両方を成功させるための鍵となります。
4. そもそも矯正中に虫-を防ぐためのセルフケア
矯正治療中は、ブラケットやワイヤーといった複雑な装置が歯に装着されるため、どうしても歯磨きがしにくくなり、食べかすや歯垢(プラーク)が溜まりやすくなります。 これにより虫歯のリスクが普段よりも格段に高まるため、毎日の丁寧なセルフケアが矯正治療を成功させるための重要な鍵となります。 虫歯ができてしまうと、痛みが出るだけでなく、最悪の場合、矯正治療を一時中断して虫歯治療を優先しなければならず、治療期間が延びてしまう可能性もあります。 ここでは、矯正中の虫歯を徹底的に防ぐための具体的なセルフケア方法を詳しく解説します。
4.1 矯正装置に合わせた歯磨きの徹底
矯正中の歯磨きは、装置の種類によって磨き方のコツが異なります。ご自身の装置に合った正しい方法を身につけ、磨き残しをなくしましょう。
4.1.1 ワイヤー矯正(ブラケット矯正)の場合
ワイヤーやブラケットの周りは特に汚れが溜まりやすいポイントです。 歯ブラシだけでなく、補助的な清掃用具を組み合わせて使うことが推奨されます。 歯ブラシは鉛筆のように軽く持つと、余計な力が入らず小刻みに動かしやすくなります。 鏡を見ながら、磨けているかを確認しながら行うのが基本です。
磨く場所 | 使用する道具 | 磨き方のコツ |
---|---|---|
歯の表面全体 | 普通の歯ブラシ (ヘッドが小さめのもの) |
まずは装置を気にせず、歯の表面全体の汚れを大まかに落とします。 |
ブラケットの周り | 普通の歯ブラシ タフトブラシ(ワンタフトブラシ) |
歯ブラシを斜め45度の角度で当て、ブラケットの上側と下側からそれぞれ毛先を入れ込むようにして、1本ずつ丁寧に磨きます。 毛束が一つになったタフトブラシを使うと、細かい部分の汚れを効率的に除去できます。 |
ワイヤーの下 | タフトブラシ 歯間ブラシ |
歯ブラシの毛先が届きにくいワイヤーの下は、タフトブラシや歯間ブラシを挿入して清掃します。 ワイヤーに沿って左右に動かし、汚れをかき出しましょう。 |
歯と歯茎の境目 | 普通の歯ブラシ タフトブラシ |
歯周病予防のためにも重要なポイントです。歯ブラシを45度の角度で当て、歯周ポケットの汚れを優しくかき出すように磨きます。 |
4.1.2 マウスピース矯正(インビザラインなど)の場合
マウスピース矯正は装置を取り外せるため、歯磨き自体は普段通り行えるのが大きなメリットです。 しかし、食事の後は必ず歯磨きをしてからマウスピースを再装着することを徹底しなければなりません。 歯が汚れたままマウスピースを装着すると、汚れや細菌が歯の表面に長時間密着し、唾液による自浄作用も働かないため、虫歯のリスクが非常に高まります。 また、歯だけでなくマウスピース自体も清潔に保つことが重要です。毎日洗浄し、細菌の温床になるのを防ぎましょう。
4.2 デンタルフロスや歯間ブラシを毎日使う
歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れを完全に取り除くことは困難です。 実際に、歯ブラシだけの場合の歯垢除去率は約6割ですが、デンタルフロスを併用することで除去率が8割以上に向上するというデータもあります。 矯正中は特に磨き残しが多くなるため、デンタルフロスや歯間ブラシの毎日の使用が不可欠です。
4.2.1 ワイヤー矯正での使い方
ワイヤーが障害となり、通常のデンタルフロスは通しにくいです。 そのため、「フロススレッダー」という糸通しのような補助具や、先端が硬くなっている「スーパーフロス」を利用するとスムーズにワイヤーの下にフロスを通すことができます。 フロスを歯の側面に沿わせてノコギリを引くようにゆっくりと動かし、歯垢をからめ取ります。 歯間ブラシは、歯と歯の間だけでなく、ブラケットの側面やワイヤーの下の清掃にも役立ちます。
4.2.2 マウスピース矯正での使い方
装置を外せるため、通常のデンタルフロスや歯間ブラシが問題なく使用できます。 ただし、歯の表面に「アタッチメント」と呼ばれる突起物がついている場合は、その周りに汚れが溜まりやすいため、特に意識して清掃するようにしましょう。
4.3 フッ素入りの歯磨き粉や洗口液を活用する
毎日の丁寧な歯磨きに加えて、フッ素を有効活用することで、虫歯予防の効果をさらに高めることができます。 フッ素には主に3つの働きがあります。
- 歯質の強化:歯の表面のエナメル質を酸に溶けにくい強い構造に変える。
- 再石灰化の促進:ごく初期の虫歯であれば、溶け出したカルシウムやリンを再び歯に戻し修復する。
- 虫歯菌の活動抑制:虫歯菌が酸を作り出す働きを弱める。
市販の歯磨き粉の多くにフッ素は配合されていますが、より高い効果を期待するなら、フッ素濃度が1450ppmと表記された高濃度の歯磨き粉を選ぶと良いでしょう。 歯磨きの際は、歯磨き粉のフッ素成分が口の中に長くとどまるよう、すすぎは少量の水で1回程度にするのが効果的です。さらに、就寝前など歯磨きをしない時間帯にフッ素洗口液(マウスウォッシュ)を併用すると、虫歯予防に繋がります。
5. 虫歯トラブルを避けるための矯正歯科医院の選び方
矯正治療を始めてから「こんなはずではなかった」と後悔しないためには、最初の歯科医院選びが非常に重要です。特に虫歯のリスクを考慮すると、矯正治療の技術力だけでなく、虫歯の発見や治療、予防に対する体制が整っているかを見極める必要があります。ここでは、虫歯トラブルを未然に防ぐための矯正歯科医院の選び方について、3つの重要なポイントを解説します。
5.1 一般歯科診療も行っている歯科医院を選ぶ
最もシンプルで安心な選択肢の一つが、矯正歯科だけでなく、虫歯治療や歯周病治療などの一般歯科診療も行っている「総合歯科医院」を選ぶことです。矯正治療と虫歯の管理を一つの医院で完結できるため、多くのメリットがあります。
最大の利点は、虫歯の発見から治療、矯正計画の調整までをシームレスに行えることです。矯正装置の調整で来院した際に、担当医や歯科衛生士が虫歯やその兆候を発見すれば、すぐに院内でレントゲン撮影などの精密検査を行い、必要であれば治療を開始できます。わざわざ別の歯科医院へ行く手間と時間が省けるだけでなく、矯正担当医と虫歯治療の担当医が常に密に情報共有できるため、治療計画への影響を最小限に抑えながら、最適な治療を進めることが可能です。
医院のタイプ | メリット | デメリット |
---|---|---|
一般歯科併設の歯科医院 | ・虫歯が見つかっても院内で即日対応できる場合がある ・情報共有がスムーズで治療計画の変更が容易 ・移動の手間や時間がかからない |
・矯正専門の歯科医院に比べて症例数が少ない場合がある |
矯正専門の歯科医院 | ・特定の矯正方法に関する専門性や技術力が高い傾向がある ・難症例に対応できる場合が多い |
・虫歯治療のためには別の歯科医院を受診する必要がある ・医院間の連携が不十分だと情報共有に時間がかかる |
5.2 地域の一般歯科との連携体制を明示している
矯正治療を専門に行う歯科医院は、特定の治療法に関する経験や実績が豊富であるという大きな魅力があります。もし、矯正専門の歯科医院を選ぶ場合は、虫歯などが発生した際に紹介できる地域の一般歯科と、明確な連携体制を築いているかを必ず確認しましょう。
信頼できる矯正歯科医院は、万が一の事態に備えて、スムーズに患者を紹介できる提携先の歯科医院を持っています。公式サイトに提携医院名が記載されていたり、カウンセリングの際に連携フローについて具体的な説明があったりするかどうかが、一つの判断基準になります。紹介状を書いてくれるだけでなく、治療内容や今後の矯正治療への影響について、提携先の歯科医師としっかりと情報共有を行ってくれる体制が整っているかを確認することが、安心して治療を進めるための鍵となります。
5.2.1 連携体制を確認するチェックリスト
- 公式サイトや院内掲示で、提携している一般歯科医院の名前が公開されているか
- カウンセリングの際に、虫歯が見つかった場合の具体的な紹介フロー(紹介状の発行、予約のサポートなど)を説明してくれるか
- 紹介先の歯科医院との情報共有(治療内容の報告など)はどのように行われるか
5.3 カウンセリングで虫歯リスクの説明が丁寧
契約前のカウンセリングは、その歯科医院が患者の口腔内全体の健康をどれだけ真剣に考えているかを見極める絶好の機会です。矯正治療の良い面だけでなく、矯正装置を装着することによる虫歯リスクの高まりや、その具体的な予防策について、時間をかけて丁寧に説明してくれる歯科医院を選びましょう。
「矯正中は歯磨きがしにくくなり、虫歯のリスクが上がります」といった一般的な説明だけでなく、どの部分に汚れが溜まりやすいのか、どのような歯ブラシや補助清掃用具(歯間ブラシ、デンタルフロスなど)を使えば良いのかを具体的に指導してくれるかどうかが重要です。また、医院として提供している予防プログラム(定期的なクリーニングやフッ素塗布など)についても確認しましょう。患者一人ひとりの口の状態に合わせたリスクと対策を提示し、質問にも誠実に答えてくれる歯科医院であれば、治療期間中も安心して任せることができます。
5.3.1 カウンセリングで確認したい質問例
- 矯正治療中に特に虫歯になりやすい場所と、その効果的なケア方法を教えてください。
- こちらの医院では、矯正中の定期的な歯のクリーニング(PMTC)やフッ素塗布は受けられますか?その頻度と費用はどれくらいですか?
- もし治療中に虫歯が見つかった場合、どのような流れで治療を進めることになりますか?提携している歯科医院があれば教えてください。
6. まとめ
矯正歯科で虫歯を指摘されないのは、専門分野の違いや装置で患部が見えにくいといった理由があります。しかし、虫歯を放置すると治療が長期化したり、抜歯に至ったりするリスクがあるため注意が必要です。矯正中の虫歯を防ぐには、日々の丁寧なセルフケアが最も重要です。もし虫歯に気づいたら、まずは矯正歯科医に相談し、一般歯科と連携して早期に治療しましょう。安心して治療を進めるためにも、虫歯リスクの説明や連携体制が整った歯科医院を選ぶことが大切です。
矯正治療のご相談をご希望の方は、下記のボタンよりお気軽にご予約ください。
この記事の監修者
尾立 卓弥(おだち たくや)
医療法人札幌矯正歯科 理事長
宮の沢エミル矯正歯科 院長
北海道札幌市の矯正専門クリニック「宮の沢エミル矯正歯科」院長。
日本矯正歯科学会 認定医。