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2025.04.03

アンカースクリュー矯正は痛い?メリット・注意点を解説

アンカースクリュー矯正は痛い?メリット・注意点を解説

アンカースクリューとは

こんにちは。医療法人 札幌矯正歯科 宮の沢エミル矯正歯科、理事長の尾立卓弥です。アンカースクリュー矯正は「痛いのでは?」と不安な方も多いでしょう。しかし、処置中の痛みは麻酔でコントロール可能で、治療期間の短縮や精度の向上といった大きなメリットがあります。この記事では、痛みのタイミングや期間、デメリットや注意点、費用相場まで網羅的に解説します。治療への不安を解消し、納得して選択するための知識が得られます。

目次

1. アンカースクリュー矯正とは そもそもどんな治療?

アンカースクリュー矯正とは、「歯科矯正用アンカースクリュー」と呼ばれる小さな医療用のネジを顎の骨に埋め込み、それを固定源(アンカー)として歯を動かす矯正治療法です。 直径1.4~2.0mm、長さ6~10mmほどのチタン製のネジを用いるのが一般的で、身体へのなじみが良くアレルギーのリスクが低いとされています。 この強力な固定源を得ることで、従来の矯正治療では難しかった歯の動きを可能にし、治療の精度や効率を大きく向上させることができます。

1.1 インプラント矯正とも呼ばれるアンカースクリューの役割

アンカースクリュー矯正は、その仕組みから「インプラント矯正」とも呼ばれます。 ただし、歯を失った際に顎の骨に埋め込むデンタルインプラントとは全くの別物です。 矯正治療におけるアンカースクリューの最も重要な役割は、歯を動かすための「絶対的な固定源」になることです。

歯を動かす際には、動かしたい歯に力を加えるための支点が必要です。従来のワイヤー矯正などでは、奥歯などを支点(固定源)にしていました。しかし、力を加えると作用・反作用の法則により、固定源にしている歯も意図しない方向に動いてしまうことがありました。 これを「アンカーロス」と呼び、治療計画が複雑になったり、治療期間が延びたりする一因となっていました。

アンカースクリューは顎の骨に直接固定されるため、歯のように動くことがありません。 これにより、動かしたい歯だけを計画通りに、効率よく移動させることが可能になるのです。

1.2 従来の矯正治療との違い

アンカースクリュー矯正と従来の矯正治療の最も大きな違いは、「固定源」の考え方にあります。この違いが、治療の様々な側面に影響を与えます。両者の特徴を以下の表にまとめました。

比較項目 アンカースクリュー矯正 従来の矯正治療(ワイヤー矯正など)
固定源 顎の骨に埋め込んだネジ(不動) 主に奥歯などの他の歯(動く可能性がある)
歯の動きの精度 動かしたい歯だけを計画通りに動かしやすい 固定源の歯が動く(反作用)ため、意図しない動きが生じることがある
治療の効率 効率的に歯を動かせるため、治療期間が短縮される傾向がある 反作用を制御するために段階的な歯の移動が必要な場合があり、時間がかかることがある
対応できる症例 奥歯を後ろに動かす、歯を歯茎の方向に押し込む(圧下)など、難しい歯の動きにも対応可能 歯を動かす方向や量に制限がある
患者様の協力 ヘッドギアなどの顎外固定装置が不要になるケースが多く、患者様の負担が少ない 症例によってはヘッドギアなど、患者様の協力が不可欠な装置を毎日使用する必要がある

このように、アンカースクリューを用いることで、従来の治療法が抱えていた「固定源が動いてしまう」という問題を解決し、より確実で効率的な治療結果を目指せるようになりました。これにより、これまで治療が困難とされてきた症例にも対応できる可能性が広がり、矯正治療の質を大きく向上させています。

2. アンカースクリュー矯正は痛い?痛みのタイミングと期間を解説

「歯茎にネジを埋め込む」と聞くと、強い痛みを想像して不安に感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、アンカースクリュー矯正に伴う痛みは、多くの場合コントロール可能であり、過度に心配する必要はありません。 痛みの種類や感じ方には個人差がありますが、どのタイミングでどのような痛みが生じる可能性があるのかを事前に知っておくことで、不安を和らげることができます。 ここでは、アンカースクリューを埋め込む処置から除去するまでの各段階で生じる可能性のある痛みについて、その期間や対処法とあわせて詳しく解説します。

2.1 処置中(埋め込むとき)の痛み

アンカースクリューを埋め込む処置は、十分な量の局所麻酔を使用して行うため、処置中に痛みを感じることはほとんどありません。 麻酔の注射をする際にチクッとした痛みを感じることはありますが、麻酔が効いてしまえば、ネジを埋め込んでいる最中の痛みはないでしょう。 骨には痛みを感じる神経(痛覚)がないため、ドリルで骨に穴を開ける際も痛みはなく、押されるような感覚や振動を感じる程度です。 処置自体も1本あたり5分から10分程度と、短時間で完了します。

2.2 処置後(麻酔が切れた後)の痛み

処置後、2〜3時間ほどで麻酔が切れてくると、痛みを感じ始めることがあります。 これは処置に伴う自然な炎症反応によるもので、痛みのピークは処置当日から翌日で、通常2〜3日、長くても1週間ほどで自然に治まっていきます。 痛み止め(鎮痛剤)が処方されるため、それを服用すれば十分にコントロールできる程度の鈍い痛みがほとんどです。 万が一、処方された痛み止めを飲んでも我慢できないほどの強い痛みが続く場合や、腫れがひどい場合は、何らかのトラブルの可能性も考えられるため、速やかにクリニックに連絡しましょう。

2.3 矯正治療中の痛みや違和感

アンカースクリューを埋め込んだ後、矯正治療を進めていく中で生じる痛みや違和感は、主に2つの種類に分けられます。

一つは、歯が動くことによる痛みです。これはアンカースクリューを用いた矯正に限らず、ワイヤー矯正などでも同様に生じる痛みです。 歯に力が加えられることで、歯の根の周りにある歯根膜が圧迫されて炎症を起こすために生じ、数日間続くことがあります。

もう一つは、アンカースクリュー自体による違和感や痛みです。スクリューのヘッド部分が頬の内側や舌などの粘膜に当たることで、違和感が生じたり、口内炎ができてしまったりすることがあります。 この違和感は1週間ほどで慣れることがほとんどですが、口内炎ができて痛む場合は、歯科医院で受け取れる「歯科用ワックス」でスクリューのヘッドを覆うことで、粘膜への刺激を和らげることができます。

2.4 除去するときの痛み

矯正治療が計画通りに進み、アンカースクリューが不要になったら除去します。埋め込む時とは異なり、除去する際の痛みはほとんどないため、麻酔を使用しないケースが多くあります。 専用のドライバーを使ってクルクルと回して外すだけで、処置は数十秒から数分で完了します。 痛みを感じることは稀で、「いつの間にか終わっていた」と感じる方がほとんどです。 除去した後の歯茎の穴は数日で自然に塞がり、1〜2週間ほどで元通りになりますので心配いりません。

痛みのタイミングや対処法を以下の表にまとめましたので、参考にしてください。

タイミング 痛みの種類・感覚 期間の目安 主な対処法
処置中 麻酔注射時の軽い痛み。処置中は押される感覚や振動のみ。 処置中のみ 局所麻酔を使用するため、痛みはほとんどない。
処置後 麻酔が切れた後のズキズキとした鈍痛や腫れ。 2〜3日(長くても1週間) 処方される痛み止め(鎮痛剤)を服用する。
矯正治療中 歯が動くことによる痛み。スクリューが粘膜に当たり口内炎ができることによる痛み。 歯の移動痛は数日。違和感は1週間程度で慣れる。 痛み止めを服用する。口内炎には歯科用ワックスを使用する。
除去時 痛みはほとんどないか、あってもごくわずか。 処置中のみ(数秒〜数分) 基本的に麻酔なし。痛みが心配な場合は相談可能。

3. 痛みを上回るアンカ-スクリュー矯正の大きなメリット

アンカースクリュー矯正は、処置時の痛みが気になる方もいらっしゃいますが、それを上回るほどの大きなメリットがあります。従来の矯正治療が抱えていた課題を克服し、より効率的で精度の高い治療を実現します。ここでは、アンカースクリュー矯正がもたらす4つの大きなメリットについて詳しく解説します。

3.1 メリット1 治療期間を短縮できる

アンカースクリュー矯正の最大のメリットの一つは、治療期間を大幅に短縮できる可能性があることです。 従来のワイヤー矯正では、歯を動かす際に奥歯などを「固定源(アンカー)」として利用していました。しかし、前歯を引っ張ると、その反作用で固定源である奥歯も前に動いてしまうという問題がありました。この意図しない歯の動きを元に戻すために、余計な時間がかかっていたのです。

一方、アンカースクリューは顎の骨に直接固定するため、動かない「絶対的な固定源」となります。 これにより、動かしたい歯だけを計画通りに効率よく動かすことができ、無駄な歯の動き(反作用)を防ぎます。 結果として、治療全体の期間が数ヶ月から1年ほど短縮されることが期待できます。

3.2 メリット2 難しい歯の動きを実現し治療の精度を高める

従来の矯正方法では難しかった、あるいは不可能だった方向へ歯を動かせるようになることも、アンカースクリューの大きなメリットです。 これにより、治療の選択肢が広がり、より理想的な歯並びを目指すことが可能になりました。

アンカースクリューによって可能になった代表的な歯の動きには、以下のようなものがあります。

歯の動き 内容 アンカースクリューによる効果
圧下(あっか) 歯を歯茎の方向(骨の中)に押し込む動き 伸びすぎてしまった歯や、笑った時に歯茎が見えすぎるガミースマイルの改善に有効です。
遠心移動(えんしんいどう) 歯列全体を奥歯の方向(後方)へ動かす動き 歯を並べるスペースを作るために行います。これにより、抜歯を避けられる可能性が高まります。
整直(せいちょく) 傾いてしまった歯をまっすぐに起こす動き 倒れた奥歯を起こして、適切な噛み合わせを作ります。

これらの複雑な歯の動きを精密にコントロールできるため、治療計画の段階で描いたゴールを高いレベルで実現でき、治療の精度が格段に向上します。

3.3 メリット3 抜歯を避けられる可能性が広がる

これまでの矯正治療では、歯が並ぶスペースが不足している場合、健康な小臼歯などを抜歯してスペースを確保することが一般的でした。しかし、「できれば歯を抜きたくない」と考える方は少なくありません。

アンカースクリューを用いることで、奥歯を後方に移動させる「遠心移動」が可能になり、抜歯をせずにスペースを確保できるケースが増えました。 これまで抜歯が必須と判断された症例でも、アンカースクリューを使うことで非抜歯での治療が可能になることがあります。 もちろん、全ての症例で抜歯を避けられるわけではありませんが、治療の選択肢が大きく広がった点は大きなメリットと言えるでしょう。

3.4 メリット4 出っ歯やガミースマイルの改善に効果的

アンカースクリューは、特定の症状の改善に特に高い効果を発揮します。

3.4.1 出っ歯(上顎前突)の改善

出っ歯の治療では、前歯を後方に大きく下げる必要があります。アンカースクリューを固定源にすることで、奥歯が前にずれることなく、効率的に前歯を後退させることができます。 これにより、口元の突出感が大きく改善されます。従来用いられていたヘッドギアのような顎外固定装置を使わずに済むケースも増えています。

3.4.2 ガミースマイルの改善

ガミースマイルは、笑ったときに上の歯茎が過剰に見えてしまう状態のことです。アンカースクリューを使って上の前歯を歯茎の方向に引き上げる「圧下」を行うことで、歯茎の見える面積を減らし、審美性を改善することができます。 以前は外科手術が必要とされたような症例でも、アンカースクリュー矯正によって改善できる可能性があります。

アンカースクリューとは

4. 知っておきたいアンカースクリュー矯正のデメリットと注意点

アンカースクリューを用いた矯正治療は、治療期間の短縮や精度の向上といった大きなメリットが期待できる一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。治療を開始してから後悔しないためにも、起こりうるリスクや注意すべき点を事前にしっかりと理解しておくことが極めて重要です。

4.1 スクリューが緩んだり抜けたりするリスク

アンカースクリューは、治療完了後に取り外すことを前提としているため、歯の治療で使われるインプラントとは異なり骨と完全に結合するわけではありません。そのため、様々な要因によってスクリューに緩みが生じたり、自然に脱落してしまったりする可能性が稀にあります。 成功率は一般的に8割〜9割程度とされていますが、リスクがゼロではないことを認識しておく必要があります。

主な原因としては、以下のような点が挙げられます。

  • 骨の密度や厚み: スクリューを埋め込む箇所の骨が薄かったり、柔らかかったりする場合、スクリューが安定しにくいことがあります。
  • 口腔内の衛生状態: スクリュー周辺の清掃が不十分でプラークが溜まると、歯茎に炎症が起きてしまい、それが原因で緩みや脱落につながることがあります。
  • 過度な力: 歯ぎしりや食いしばりの癖が強いと、スクリューに過度な負担がかかり、緩みの原因となる場合があります。
  • その他: 喫煙は血行を阻害し、歯茎の健康に悪影響を与えるため、スクリューの安定性に影響を及ぼす可能性があります。

もしスクリューにぐらつきを感じたり、抜けてしまったりした場合は、自分で戻そうとせず、速やかにかかりつけの歯科医院に連絡してください。 状態によっては、同じ場所に再度埋入するか、別の位置に埋め直すといった処置が必要になります。

4.2 口内炎や歯茎の腫れ

アンカースクリューは、スクリューの頭の部分が口腔内に露出しています。そのため、舌や頬の粘膜にスクリューが接触することで、口内炎ができてしまうことがあります。 特に装着して間もない頃は、異物感と共に粘膜が刺激を受けやすい状態です。多くの場合、時間が経つにつれて慣れていきますが、痛みが強い場合は、スクリューのヘッド部分を覆う「矯正用ワックス」を使用することで、粘膜への刺激を和らげることができます。

また、埋入した直後や、周辺の清掃が不十分な場合には、歯茎が炎症を起こして腫れることがあります。 埋入後の軽度な腫れは2〜3日で治まることがほとんどですが、痛みが長引いたり、腫れがひどくなったりする場合は感染の可能性も考えられるため、早めに歯科医師に相談しましょう。

4.3 清掃がしにくく衛生管理が必要

アンカースクリューの周辺は、通常の歯ブラシだけでは磨きにくく、汚れやプラーク(歯垢)が非常に溜まりやすい場所です。 この部分の清掃を怠ると、細菌が繁殖して歯茎に炎症(インプラント周囲粘膜炎)を引き起こし、腫れや痛みの原因となるだけでなく、最悪の場合はスクリューの緩みや脱落につながる可能性があります。 そのため、日々の丁寧なセルフケアが治療を成功させる上で不可欠です。

衛生管理を徹底するため、以下の道具を活用した清掃が推奨されます。

清掃用具 使用方法とポイント
タフトブラシ(ワンタフトブラシ) 毛先が小さくまとまっているため、スクリューの根元やヘッドの周りなど、細かい部分の汚れをピンポイントで除去するのに非常に効果的です。 鏡を見ながら、優しく丁寧に磨きましょう。
歯間ブラシ スクリューと歯の間など、狭い隙間の清掃に適しています。サイズがいくつかあるため、歯科医師や歯科衛生士に適切なものを選んでもらいましょう。
殺菌成分のある洗口液(デンタルリンス) ブラッシングの補助として使用することで、口腔内全体の細菌の繁殖を抑える効果が期待できます。 タフトブラシに少量つけて磨く方法も推奨されています。

これらの道具を使い、毎日の歯磨きの際にスクリュー周辺も忘れずに清掃する習慣をつけましょう。また、定期的に歯科医院で専門的なクリーニングを受け、衛生状態をチェックしてもらうことも大切です。

5. アンカースクリュー矯正の治療の流れと費用相場

アンカースクリューを用いた矯正治療を検討する際、多くの方が気になるのが「どのような手順で治療が進むのか」「費用はどれくらいかかるのか」という点でしょう。ここでは、カウンセリングからアンカースクリューの除去までの具体的な流れと、費用の目安について詳しく解説します。

5.1 カウンセリングからスクリュー除去までのステップ

アンカースクリュー矯正は、通常の矯正治療のプロセスにスクリューの埋入と除去のステップが加わります。全体の流れを把握しておくことで、安心して治療に臨むことができます。

ステップ 内容 所要時間の目安
Step 1: カウンセリング・精密検査 まず、歯科医師によるカウンセリングを受け、歯並びの悩みや希望を伝えます。アンカースクリュー矯正が最適な治療法かどうかの診断を受けます。治療が可能と判断された場合、レントゲンやCT撮影、口腔内スキャンなどの精密検査を行い、顎の骨の状態や歯の位置を詳細に確認し、スクリューを埋め込む最適な位置を決定します。 30分~1時間程度
Step 2: 治療計画の説明・同意 精密検査の結果をもとに、担当の歯科医師が具体的な治療計画、治療期間、費用について詳しく説明します。内容に納得できたら、同意書にサインをして治療の契約となります。 30分程度
Step 3: スクリューの埋入処置 埋入する部位の歯茎を消毒し、局所麻酔を行います。麻酔が効いたことを確認した後、専用の器具を使ってアンカースクリューを顎の骨に埋め込みます。処置は1本あたり5~10分程度で完了し、麻酔をするため痛みはほとんど感じません。 処置後は感染予防のために抗生物質や、痛みが出た場合のために鎮痛剤が処方されることが一般的です。 全体で30分~1時間程度
Step 4: 矯正治療の開始 スクリューの状態が安定したら(埋入直後~数週間後)、ワイヤーやゴムなどの矯正装置をスクリューに連結し、歯を動かすための力をかけ始めます。 これにより、計画通りに歯を効率的に移動させていきます。
Step 5: 定期的な調整・メンテナンス 治療期間中は、月に1回程度のペースで通院し、歯の動き具合のチェックやワイヤーの調整、口腔内のクリーニングなどを行います。また、スクリューが緩んでいないか、周辺の歯茎に炎症が起きていないかなども確認します。 1回の通院で30分程度
Step 6: アンカースクリューの除去 計画通りに歯の移動が完了し、アンカースクリューが不要になった段階で除去します。除去する際は、多くの場合麻酔は不要、もしくは簡単な表面麻酔で行われ、痛みはほとんどありません。 埋入した時とは逆方向に回すだけで簡単に取り外せます。除去後の歯茎の穴は、数日から1週間程度で自然にふさがります。 5分程度

5.2 アンカースクリューにかかる費用の目安

アンカースクリューを用いた矯正治療の費用は、基本的な矯正治療費に加えて、オプションとしてアンカースクリューの費用が追加される形になります。 費用は自由診療のため、歯科医院によって異なります。

項目 費用相場 備考
アンカースクリュー埋入費 1本あたり 20,000円~50,000円 使用する本数(通常2~4本)によって総額が変わります。
CT撮影などの精密検査費 10,000円~30,000円 矯正治療の基本料金に含まれている場合もあります。
除去費用 無料~10,000円程度 埋入費用や矯正治療費に含まれていることが多いです。

例えば、ワイヤー矯正(全体)の費用が70万円~130万円程度とすると、アンカースクリューを4本使用した場合は、これに8万円~20万円程度が追加される計算になります。

審美目的の歯列矯正は、原則として公的医療保険の適用外(自由診療)となります。 そのため、アンカースクリューにかかる費用も全額自己負担です。ただし、「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常など、特定の条件を満たす症例では保険適用となる場合がありますが、これは非常に限定的です。 費用について不明な点があれば、カウンセリングの際に必ず確認し、複数のクリニックで見積もりを取って比較検討することをおすすめします。

6. アンカースクリ-ュー矯正に関するよくある質問

アンカースクリュー矯正を検討するにあたり、多くの方が抱く疑問や不安についてお答えします。痛みや治療そのものだけでなく、日常生活に関わる細かな点まで解消し、安心して治療に臨めるようサポートします。

6.1 食事に制限はありますか?

アンカースクリューを埋め込んだ後の食事について、基本的に厳しい食事制限はありませんが、いくつかの点に注意が必要です。 処置当日は麻酔が切れるまで食事を控え、その後はスクリューを埋め込んだ箇所を刺激しないよう、おかゆやスープ、ゼリーなど柔らかいものから食べ始めるのが良いでしょう。

スクリューが安定するまでの数週間から2〜3ヶ月程度は、硬い食べ物(せんべいやナッツなど)や、粘着性の高い食べ物(ガムやキャラメルなど)は、スクリューに直接当たって緩みや脱落の原因となる可能性があるため、避けることをお勧めします。 また、ほうれん草やえのきなどの繊維質の多い野菜は、スクリューの周りに絡まりやすいので注意が必要です。 食事の際は、スクリューを埋め込んだ側とは反対側で噛むなど、少し工夫をすると良いでしょう。

6.2 スクリュー周りのお手入れはどうすればいいですか?

アンカースクリューを長持ちさせ、感染を防ぐためには、日々の丁寧な清掃が非常に重要です。 スクリューの周りにプラーク(歯垢)が溜まると、歯茎が炎症を起こして腫れたり、痛みが出たりする原因となります。 炎症がひどくなると、スクリューが不安定になり、最悪の場合抜け落ちてしまうこともあります。

お手入れには、毛先が細く柔らかい「タフトブラシ(ワンタフトブラシ)」の使用が推奨されています。 鏡を見ながら、スクリューの頭の部分や歯茎との境目を、一本一本優しく磨くように清掃してください。 研磨剤の入っていないジェルタイプの歯磨き粉や、殺菌作用のある洗口液(デンタルリンス)を併用するのも効果的です。 埋入直後はデリケートな状態なので、歯科医師の指示に従い、指定された時期から清掃を開始してください。

6.3 誰でもアンカースクリュー矯正を受けられますか?

アンカースクリュー矯正は多くの症例で有効な治療法ですが、すべての方に適応となるわけではありません。適用可能かどうかは、いくつかの条件によって判断されます。

6.3.1 骨の状態や全身疾患による制限

アンカースクリューは顎の骨に埋め込むため、骨の成長が完了していることが一つの目安となります。 一般的には、骨が安定する16歳以降が対象とされますが、骨の状態によってはそれ以前でも可能な場合があります。 逆に、重度の歯周病によって歯を支える骨(歯槽骨)が少なくなっている場合や、骨粗しょう症など骨の代謝に影響する疾患がある場合は、スクリューが安定しにくいため適用が難しいことがあります。

また、コントロールされていない糖尿病や出血性の疾患など、外科的な処置のリスクを高める全身疾患がある場合も、慎重な判断が必要となります。

6.3.2 生活習慣やアレルギーによる注意点

喫煙習慣は、アンカースクリュー矯正の成功率に大きく影響します。 タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血行を悪化させるため、傷の治りを遅らせ、スクリューと骨との結合を妨げる可能性があります。 これにより、スクリューの脱落リスクが高まるため、治療期間中は禁煙することが強く推奨されます。

アンカースクリューの材質は、生体親和性が高くアレルギー反応を起こしにくいチタンやチタン合金が主に使用されています。 しかし、非常に稀ですが重度の金属アレルギーがある方は、事前にパッチテストなどで確認することが重要です。 最終的には、レントゲンやCTによる精密検査と、歯科医師による総合的な診断のもとで、アンカースクリュー矯正が適切かどうかが決定されます。

7. まとめ

アンカースクリュー矯正は、治療期間の短縮や難しい歯の移動を可能にするなど、多くのメリットがある治療法です。処置の際は麻酔を使用するため痛みはほとんどなく、処置後の痛みも一時的で鎮痛剤で対応できます。スクリューの脱落リスクや清掃の必要性といった注意点はありますが、それを上回る治療精度の向上や抜歯を避けられる可能性といった大きな利点があります。ご自身の歯並びに適しているか、まずは専門の歯科医師に相談してみましょう。

矯正治療のご相談をご希望の方は、下記のボタンよりお気軽にご予約ください。

この記事の監修者

尾立 卓弥(おだち たくや)

医療法人札幌矯正歯科 理事長
宮の沢エミル矯正歯科 院長

北海道札幌市の矯正専門クリニック「宮の沢エミル矯正歯科」院長。
日本矯正歯科学会 認定医。

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