歯列矯正中の気になる口臭…原因と今すぐできる5つの対策を徹底解説!
歯列矯正を始めて口臭が気になりだした方へ。そのお悩み、実は多くの方が抱えています。この記事を読めば、なぜ歯列矯正中に口臭が発生しやすいのか、その主な原因が分かります。さらに、矯正装置の種類に応じた歯磨き方法や、歯間ブラシ、マウスウォッシュなどを活用した具体的な口臭対策5つを詳しく解説。セルフケアで改善しない場合の対処法まで、あなたの疑問や不安を解消します。
1. 歯列矯正を始めたら口臭が気になりだした?そのお悩みは一般的です
美しい歯並びを目指して歯列矯正をスタートしたものの、「なんだか最近、口の臭いが気になる…」「以前はこんなことなかったのに…」と感じていませんか? 実は、歯列矯正を始めてから口臭が気になりだした、というお悩みは決して珍しいものではなく、多くの方が経験される一般的なお悩みなのです。
慣れない矯正装置がお口の中に入ることで、これまでとは異なる感覚に戸惑ったり、口元への意識が高まったりすることも、口臭を感じやすくなる一因かもしれません。しかし、それだけではなく、歯列矯正特有の理由によって、実際に口臭が発生しやすい環境になっている可能性も考えられます。
インターネット上の体験談やSNSなどを見てみても、矯正中の口臭に悩む声は少なくありません。例えば、以下のような声が見られます。
矯正の種類 | 矯正開始後に感じた口臭の変化 (例) |
---|---|
ワイヤー矯正 | 「装置の周りに食べカスが詰まりやすく、歯磨きをしてもスッキリしない感じが残り、臭いが気になるようになった。」 |
ワイヤー矯正 | 「話しづらさから口呼吸が増えたのか、朝起きた時の口内のネバつきと口臭が以前より強くなった気がする。」 |
マウスピース矯正(インビザラインなど) | 「マウスピースを長時間装着していると、外した時に唾液のような独特の臭いを感じることがある。」 |
マウスピース矯正(インビザラインなど) | 「食事のたびに着脱するのが手間で、食後の歯磨きがおろそかになりがちな時に、口臭を感じやすい。」 |
このように、矯正装置の種類に関わらず、多くの方が口臭の変化を感じる可能性があるのです。「もしかして自分だけ…?」と不安に思う必要はありません。大切なのは、なぜ口臭が気になるのか、その原因を正しく理解し、適切な対策を行うことです。
この記事では、まず歯列矯正中に口臭が強くなりやすい原因を詳しく解説し、その後、今日からすぐに実践できる具体的な対策をご紹介していきます。矯正治療は口内環境が変化しやすい期間ですが、適切なセルフケアやプロフェッショナルケアを取り入れることで、口臭の悩みは十分に改善・予防できるケースがほとんどです。安心して矯正治療を進められるよう、一緒に知識を深めていきましょう。
まずは、なぜ歯列矯正中に口臭が発生しやすくなるのか、その主な原因から見ていきましょう。
2. なぜ歯列矯正中に口臭が強くなるのか 主な4つの原因
歯列矯正を始めてから口臭が気になるようになったと感じる方は少なくありません。矯正治療は美しい歯並びを手に入れるための素晴らしいプロセスですが、その過程で口内環境が変化し、一時的に口臭が発生・悪化しやすい状況になることがあります。なぜ歯列矯正中に口臭が強くなるのでしょうか。ここでは、その主な4つの原因について詳しく解説していきます。
2.1 原因1 矯正装置周辺の磨き残しによるプラークの増加
歯列矯正中に口臭が発生する最も一般的な原因は、矯正装置周辺の清掃不良によるプラーク(歯垢)の蓄積です。ワイヤー矯正で使用するブラケットやワイヤー、マウスピース矯正(インビザラインなど)で使用するマウスピースなど、矯正装置は歯の表面に複雑な構造物を付加します。
これにより、普段の歯磨きだけでは歯ブラシの毛先が届きにくい箇所が増え、食べかすやプラークが非常に溜まりやすくなります。特に、以下のような箇所は注意が必要です。
- ワイヤー矯正の場合:ブラケットの周り、ワイヤーの下、歯と歯の間、歯と歯茎の境目
- マウスピース矯正の場合:マウスピースと歯の隙間、アタッチメント(歯に付ける突起物)の周り、マウスピースの内側
プラークは単なる食べかすではなく、細菌の塊です。プラーク1mgあたりには、実に1億個以上もの細菌が存在すると言われています。これらの細菌は、口の中に残った食べかすに含まれるタンパク質などを分解し、揮発性硫黄化合物(VSC)と呼ばれるガスを産生します。このガスが、いわゆる「口臭」の主な原因物質(卵が腐ったような臭い、野菜が腐ったような臭いなど)となります。
矯正装置によってプラークが付着しやすい状態が続くと、細菌が繁殖し続け、口臭が強くなってしまうのです。さらに、プラークが唾液中のカルシウムなどと結合して硬くなったものが歯石です。歯石の表面はザラザラしているため、さらにプラークが付着しやすくなり、口臭や歯周病のリスクを高める悪循環に陥る可能性があります。
2.2 原因2 口が閉じにくくなることによる口内の乾燥と唾液減少
歯列矯正、特にワイヤー矯正を始めたばかりの頃や、マウスピースを装着している間は、装置の厚みや異物感によって唇が閉じにくくなることがあります。無意識のうちに口が開いた状態が続くと、口呼吸になりがちです。
口呼吸は、口の中の水分を蒸発させ、口内を乾燥(ドライマウス)させます。唾液は、私たちの口の健康を守るために非常に重要な役割を担っています。
唾液の主な働き | 内容 |
---|---|
自浄作用 | 食べかすや細菌を洗い流し、口の中を清潔に保つ。 |
抗菌作用 | リゾチームやラクトフェリンなどの抗菌物質を含み、細菌の増殖を抑制する。 |
粘膜保護作用 | 口の中の粘膜を潤し、傷つきにくくする。 |
緩衝作用 | 食後の酸性に傾いた口内環境を中和し、歯が溶ける(脱灰)のを防ぐ。 |
再石灰化作用 | 唾液中のカルシウムやリンが、初期の虫歯を修復する。 |
消化作用 | アミラーゼなどの消化酵素を含み、デンプンを分解する。 |
口内が乾燥して唾液の分泌量が減少すると、これらの唾液の持つ重要な働きが低下してしまいます。特に自浄作用や抗菌作用が弱まると、口の中で細菌が繁殖しやすくなり、プラークの増加(原因1)とも相まって、口臭が発生・悪化しやすくなるのです。
また、唾液が少ない状態では、舌の表面も乾燥し、次に説明する舌苔(ぜったい)が付着しやすくなるという側面もあります。特に睡眠中は唾液の分泌量が大幅に減少するため、朝起きた時に口臭を感じやすくなるのはこのためです。
2.3 原因3 舌苔(ぜったい)の付着
口臭の原因として、歯や歯茎の問題と同じくらい重要なのが「舌苔(ぜったい)」です。舌苔とは、舌の表面に付着する白い苔(こけ)のようなもので、その正体は細菌、食べかす、剥がれ落ちた口の中の粘膜細胞、白血球などです。
健康な人でも舌にはある程度の舌苔が付着していますが、過剰に蓄積すると口臭の主要な発生源となります。舌苔に含まれる細菌が、食べかすや剥がれた粘膜のタンパク質を分解する際に、原因1で述べた揮発性硫黄化合物(VSC)などの臭い物質を産生するためです。
歯列矯正中は、以下の理由から舌苔が付着・増加しやすくなることがあります。
- 口内の乾燥:原因2で述べたように、口が乾燥すると舌の表面も乾燥し、汚れが付着しやすくなります。唾液による自浄作用も低下します。
- 清掃不足:歯磨きに意識が集中し、舌のケアがおろそかになりがちです。
- 舌の動きの制限:矯正装置によっては、舌の動きがわずかに制限され、舌表面の汚れが自然に除去されにくくなる場合があります。
- ストレス:矯正治療に伴うストレスが、唾液の分泌量を減少させ、間接的に舌苔の増加につながる可能性も指摘されています。
舌苔は口臭全体の約6割を占める原因とも言われており、歯列矯正中の口臭対策においても、舌のケアは非常に重要です。
2.4 原因4 矯正前からあった虫歯や歯周病の悪化
歯列矯正治療を開始する前には、通常、口腔内の精密な検査が行われ、虫歯や歯周病がある場合は、矯正治療を開始する前に治療を行うのが一般的です。しかし、ごく初期の虫歯や歯周病が見過ごされたり、矯正治療中に新たに発生したりする可能性もゼロではありません。
もし矯正前から虫歯や歯周病が存在していた場合、矯正装置が付くことで清掃がより困難になり、これらの病気が急速に悪化して口臭を引き起こすことがあります。
- 虫歯による口臭:虫歯が進行して歯に穴が開くと、そこに食べかすが詰まり、細菌が繁殖して腐敗臭を発します。神経まで達するような深い虫歯では、さらに強い臭いを発することがあります。
- 歯周病による口臭:歯周病は、歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)で歯周病菌が増殖し、歯茎の炎症や出血、さらには歯を支える骨(歯槽骨)の破壊を引き起こす病気です。歯周病菌は特有の強い臭い(メチルメルカプタンなど、玉ねぎが腐ったような臭いと表現されることも)を持つ揮発性硫黄化合物を産生します。歯周ポケットが深くなると、膿が溜まり、さらに口臭が悪化します。
矯正装置は、これらの虫歯や歯周病が潜んでいる箇所へのアクセスを妨げ、ブラッシングやフロスを困難にします。そのため、矯正治療中は、通常時よりも虫歯や歯周病が進行しやすい環境にあると言えます。矯正開始前にしっかりと治療を終えておくこと、そして矯正期間中も歯科医師や歯科衛生士によるチェックとケアを定期的に受けることが、口臭予防の観点からも極めて重要です。
3. 今日から実践可能 歯列矯正中の口臭を抑える5つの対策
歯列矯正中の口臭は、多くの方が経験する悩みですが、適切なケアを行うことで十分に抑えることが可能です。ここでは、ご自宅で今日からすぐに始められる具体的な口臭対策を5つご紹介します。毎日の習慣に取り入れて、矯正期間中も快適な口内環境を維持しましょう。
3.1 対策1 矯正装置の種類に合わせた丁寧な歯磨き
歯列矯正中の口臭対策の基本は、なんといっても毎日の丁寧な歯磨きです。矯正装置がついていると、どうしても食べかすやプラーク(歯垢)が溜まりやすくなります。プラークは細菌の温床となり、口臭の直接的な原因となるガスを発生させます。装置の種類によって磨き方のコツが異なるため、それぞれに合わせたテクニックを習得することが重要です。歯磨きができないときにおすすめな方法を他の記事にまとめました。「矯正中でも口内スッキリ!歯磨きできない時のおすすめケア方法完全ガイド」も一緒にご覧ください。
3.1.1 ワイヤー矯正の方向け歯磨きテクニック
ワイヤー矯正(マルチブラケット装置)は、歯の表面にブラケットという小さな装置を接着し、そこにワイヤーを通して歯を動かします。構造が複雑なため、特に以下の点に注意して磨きましょう。
- ブラケットの周り: 歯ブラシの毛先をブラケットの上下左右にしっかり当て、軽い力で小刻みに動かして汚れを掻き出します。特にブラケットと歯茎の境目はプラークが残りやすい箇所です。
- ワイヤーの下: 歯ブラシを斜め上や斜め下から入れ込み、ワイヤーの下に溜まった食べかすやプラークを除去します。
- 歯と歯の間: 装置があると歯間ブラシやフロスが通りにくい場合がありますが、可能な範囲で丁寧に清掃します。(詳しくは対策2で解説)
- 歯ブラシの角度: 歯に対して45度くらいの角度で毛先を当てると、歯と歯茎の境目の溝(歯周ポケット)やブラケット周りの汚れを効率的に除去できます。
- 歯磨き粉の選び方: フッ素配合の歯磨き粉は虫歯予防に効果的です。研磨剤が多く含まれているものは、装置を傷つける可能性があるので注意しましょう。歯科医師に相談して選ぶのがおすすめです。
通常の歯ブラシだけでは磨き残しが出やすいため、後述するタフトブラシや歯間ブラシなどを併用することが非常に効果的です。
3.1.2 マウスピース矯正(インビザラインなど)の方向け歯磨きテクニック
マウスピース矯正(インビザラインなど)は、透明なマウスピース型の装置(アライナー)を定期的に交換しながら歯を動かす方法です。食事や歯磨きの際には基本的に取り外せるため、ワイヤー矯正に比べると歯磨き自体はしやすいですが、油断は禁物です。
- 食後の歯磨きは必須: 食事の際は必ずマウスピースを外し、食後は歯磨きをしてから再装着するのが原則です。歯磨きをせずにマウスピースを装着すると、食べかすや糖分が歯とマウスピースの間に閉じ込められ、虫歯や口臭のリスクが非常に高まります。
- アタッチメント周り: 歯の表面に「アタッチメント」と呼ばれる小さな突起物を付けることがあります。この周りは汚れが溜まりやすいので、意識して丁寧に磨きましょう。
- マウスピース(アライナー)の洗浄: 歯だけでなく、マウスピース自体も清潔に保つことが重要です。流水下で指や柔らかい歯ブラシを使って優しく洗いましょう。専用の洗浄剤を使用するのも効果的です。熱湯消毒や歯磨き粉での洗浄は、変形や傷の原因となるため避けてください。
- 装着時間と口内環境: マウスピースは1日のうち20時間以上の装着が推奨されることが多く、装着中は唾液の循環が妨げられがちです。唾液には口内の汚れを洗い流す自浄作用や細菌の増殖を抑える抗菌作用があるため、唾液が行き渡りにくくなると口臭が発生しやすくなります。
マウスピース矯正の場合でも、歯間ブラシやデンタルフロスを使った歯間清掃は、口臭予防のために欠かせません。
3.2 対策2 歯間ブラシやデンタルフロスなど補助清掃用具の活用
歯ブラシだけでは、歯と歯の間や矯正装置の細かい部分の汚れを完全に取り除くことは困難です。歯ブラシによる清掃率は約60%程度とも言われており、残りの40%の汚れを除去するためには、歯間ブラシやデンタルフロス、タフトブラシといった補助清掃用具の活用が不可欠です。
3.2.1 歯間ブラシやフロスを使った歯列矯正中の清掃ポイント
- 歯間ブラシ: 歯と歯の隙間の広さに合わせて適切なサイズを選びます。ワイヤー矯正の場合、ワイヤーの下から挿入して歯間を清掃します。無理に挿入すると歯茎を傷つけることがあるため、スムーズに入るサイズを選びましょう。サイズ選びに迷ったら、歯科医院で相談するのが確実です。
- デンタルフロス: 歯と歯が接している面のプラーク除去に効果的です。
- ワイヤー矯正の場合: ワイヤーが邪魔で通常のフロスは通しにくいことが多いです。フロススレッダー(フロスを通すための補助具)を使ったり、先端が硬くなっていてワイヤーの下に通しやすいタイプのフロス(スーパーフロスなど)を利用すると良いでしょう。
- マウスピース矯正の場合: 装置を外した状態で、通常のフロスを使用できます。歯と歯の間にフロスをゆっくり挿入し、歯の側面に沿わせて上下に動かし、プラークを掻き出します。
歯間ブラシやフロスは、毎日の歯磨きの際に併用することで、口臭の原因となるプラークの除去率を大幅に向上させることができます。
3.2.2 細かい部分に届くタフトブラシの活用法
タフトブラシ(ワンタフトブラシ)は、毛束が小さく、鉛筆のように持ってピンポイントで汚れを落とせる歯ブラシです。矯正装置の周りや、歯ブラシの毛先が届きにくい場所に最適です。
- ワイヤー矯正のブラケット周り: ブラケットと歯の境目、ワイヤーとブラケットの間など、汚れが溜まりやすい箇所を軽い力で丁寧に磨きます。
- 歯が重なっている部分: 歯並びが悪い箇所や、矯正治療で歯が動いている途中の磨きにくい部分にも効果的です。
- 一番奥の歯の裏側: 歯ブラシが届きにくく、磨き残しが多い箇所も、タフトブラシなら容易に清掃できます。
- マウスピース矯正のアタッチメント周り: アタッチメントの凹凸部分の清掃にも役立ちます。
タフトブラシは、歯磨きの仕上げとして、特に汚れが残りやすい部分に使用するのがおすすめです。
3.3 対策3 マウスウォッシュ(洗口液)で口内を殺菌 洗浄
マウスウォッシュ(洗口液)は、歯磨きや補助清掃用具の使用に加えて、口内全体の細菌数を減らし、口臭を予防するのに役立ちます。液体なので、歯ブラシなどが届きにくい隅々まで行き渡りやすいのがメリットです。マウスウォッシュとしては、モンダミンが有名です。
- 効果: 殺菌成分が含まれているものは口臭の原因菌の増殖を抑制し、洗浄成分が含まれているものは口内の食べかすなどを洗い流す効果が期待できます。爽快感を得られるだけでなく、口内環境を清潔に保つ手助けとなります。
- 選び方:
- アルコール含有の有無: アルコール配合タイプはスッキリ感が強いですが、刺激が強く感じられたり、口内が乾燥しやすくなったりすることがあります。矯正中は口内がデリケートになっていることもあるため、ノンアルコールタイプや低刺激性のものを選ぶのがおすすめです。
- 殺菌成分: 塩化セチルピリジニウム(CPC)やクロルヘキシジンなどが配合されているものは、口臭原因菌への効果が期待できます。
- 香味: 好みの香味のものを選ぶことで、継続して使用しやすくなります。
- 使い方: 適量を口に含み、30秒ほど口内全体に行き渡らせるようにブクブクうがいをします。使用後は水で口をすすがない方が効果的な製品もありますので、パッケージの説明に従いましょう。
- 使用タイミング: 歯磨き後や就寝前、または口臭が気になった時に使用するのが一般的です。
ただし、マウスウォッシュはあくまで補助的なケアです。歯磨きで物理的にプラークを除去することが最も重要であり、マウスウォッシュだけで口臭問題を解決できるわけではありません。
3.4 対策4 舌クリーナーを使った正しい舌ケアで口臭予防
口臭の大きな原因の一つに「舌苔(ぜったい)」があります。舌苔とは、舌の表面に付着した白っぽい苔のようなもので、細菌や食べかす、剥がれ落ちた粘膜細胞などが溜まって形成されます。この舌苔に含まれる細菌が、口臭の原因となる揮発性硫黄化合物を産生します。
- 舌苔のチェック: 鏡で舌の表面を見て、白や黄色っぽい苔が付着していないか確認しましょう。特に舌の奥の方に溜まりやすい傾向があります。
- 舌クリーナー(舌ブラシ)の使用: 舌の清掃には、専用の舌クリーナーや舌ブラシを使用するのがおすすめです。歯ブラシで舌を磨くと、硬い毛先が舌の表面にある味を感じる味蕾(みらい)を傷つけてしまう可能性があるため避けましょう。
- 正しい使い方:
- 舌クリーナーを舌の奥の方に軽く当てます。「おえっ」とならない程度の位置から始めましょう。
- 軽い力で、奥から手前へと、一方方向にゆっくり動かして舌苔を掻き出します。往復させたり、ゴシゴシ強くこすったりしないように注意してください。
- 数回繰り返したら、口をよくすすぎます。
- 使用後の舌クリーナーは、きれいに洗って乾燥させ、清潔に保管します。
- 頻度: 舌の清掃は、1日1回、朝の歯磨き時などに行うのが目安です。やりすぎると舌を傷つけ、かえって口臭が悪化することもあるため注意が必要です。
適切な舌ケアを取り入れることで、口臭を効果的に軽減できます。
3.5 対策5 こまめな水分補給で口内の潤いを保つ
唾液には、口の中の汚れを洗い流す「自浄作用」、細菌の増殖を抑える「抗菌作用」、口の中の酸性度を中和する「緩衝作用」など、口内環境を健康に保つための重要な働きがあります。しかし、歯列矯正中は、装置によって口が閉じにくくなったり、口呼吸になったりすることで、口の中が乾燥しやすくなることがあります。
口内が乾燥すると唾液の分泌量が減少し、これらの作用が低下してしまいます。その結果、細菌が繁殖しやすくなり、口臭が発生・悪化しやすくなるのです。
- こまめな水分摂取: のどが渇いたと感じる前に、意識的に水分を摂るようにしましょう。一度にたくさん飲むのではなく、少量ずつ頻繁に口に含み、口内全体を潤すようにすると効果的です。
- 飲み物の種類: 飲むものは、水やお茶(カフェインの少ない麦茶など)が最適です。糖分の多いジュースやスポーツドリンクは、虫歯のリスクを高めるため、できるだけ避けましょう。
- 唾液腺マッサージ: 耳の下や顎の下にある唾液腺を指で優しくマッサージすることも、唾液の分泌を促すのに役立ちます。
- キシリトールガムなど: キシリトール配合のガムを噛むことも唾液分泌を促進しますが、ワイヤー矯正の場合は装置にガムがくっついてしまう可能性があるため、注意が必要です。マウスピース矯正の場合は、装置を外している時に噛むようにしましょう。
口内の潤いを保つことは、口臭予防だけでなく、虫歯や歯周病の予防にも繋がる大切な習慣です。
4. さらに効果を高める歯列矯正中の口臭予防策
基本的なセルフケアに加えて、以下の方法を取り入れることで、歯列矯正中の口臭予防効果をさらに高めることができます。専門家の力を借りたり、生活習慣を見直したりすることで、より快適な矯正生活を目指しましょう。
4.1 歯科医院での定期的なプロフェッショナルケア
矯正治療中は、セルフケアだけではどうしても磨き残しが出やすい状態になります。特にワイヤーやブラケットの周り、歯と歯茎の境目などは汚れが溜まりやすく、口臭の原因となる細菌の温床になりがちです。そのため、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアが非常に重要になります。
プロフェッショナルケアでは、歯科医師や歯科衛生士が専門的な器具や薬剤を用いて、普段の歯磨きでは落としきれない歯垢(プラーク)や歯石を徹底的に除去します。主なケア内容は以下の通りです。
- PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning): 専用の機器とフッ化物入りの研磨ペーストを使用し、歯の表面をツルツルに磨き上げ、プラークの再付着を防ぎます。
- スケーリング(歯石除去): 超音波スケーラーや手用スケーラーを用いて、歯ブラシでは取れない硬くなった歯石を除去します。歯石は細菌の塊であり、口臭の大きな原因となります。
- フッ素塗布: 歯質を強化し、虫歯になりにくい状態を作ることで、虫歯由来の口臭リスクを低減します。
- ブラッシング指導: 矯正装置の種類や歯並びに合わせた、より効果的な歯磨き方法や補助清掃用具の使い方について、個別指導を受けられます。
これらのケアを定期的に受けることで、口臭予防はもちろん、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療にも繋がり、矯正治療をスムーズに進める助けとなります。通院頻度は、お口の状態や矯正装置の種類によって異なりますが、一般的には1ヶ月から3ヶ月に一度程度の受診が推奨されます。担当の歯科医師と相談し、適切な間隔でプロフェッショナルケアを受けましょう。
4.2 食生活の見直しと口臭を発生させにくい食品選び
口臭は、お口の中の状態だけでなく、食生活も大きく影響します。食べかすが残りやすい食品や、口臭の原因物質を発生させやすい食品を頻繁に摂取していると、口臭が悪化しやすくなります。歯列矯正中は特に、装置に食べ物が挟まりやすいため注意が必要です。
以下に、口臭を発生させやすい食品と、予防に役立つ食品の例を挙げます。
4.2.1 口臭を発生させやすい食品
食品の種類 | 主な理由 |
---|---|
ニンニク、ニラ、ネギ類 | 揮発性硫黄化合物(VSC)を多く含み、摂取後、体内で吸収され呼気として排出されるため。 |
アルコール | 利尿作用による脱水症状や、唾液の分泌を抑制するため口内が乾燥しやすくなる。また、アルコール自体が分解される過程でアセトアルデヒドなどの臭い物質が発生する。 |
砂糖が多く含まれる飲食物(ジュース、お菓子など) | 口内の細菌のエサとなり、増殖を促しプラーク(歯垢)を形成しやすくする。プラークは口臭の原因となる。 |
コーヒー、紅茶 | カフェインの利尿作用や唾液分泌抑制作用により口内が乾燥しやすくなる。また、歯に着色しやすく、汚れが付着しやすくなる側面もある。 |
乳製品(チーズ、牛乳など) | タンパク質が豊富で、口内細菌によって分解される際に臭いを発しやすい。舌苔(ぜったい)の原因となることもある。 |
4.2.2 口臭予防に役立つ食品
食品の種類 | 期待される効果 |
---|---|
食物繊維が豊富な野菜や果物(リンゴ、セロリ、ニンジンなど) | よく噛むことで唾液の分泌が促進され、口内の自浄作用が高まる。また、食物繊維が歯の表面の汚れを物理的に除去する効果も期待できる。腸内環境を整える効果も。 |
梅干し、レモンなど酸味のある食品 | クエン酸などが唾液腺を刺激し、唾液の分泌を促す。ただし、酸蝕歯のリスクもあるため、摂取後は水で口をすすぐなどのケアが推奨される。 |
緑茶 | カテキンに含まれるフラボノイドには抗菌作用や消臭作用があり、口臭の原因菌の増殖を抑える効果が期待される。 |
キシリトール配合のガムやタブレット | 噛むことで唾液の分泌を促進する。キシリトールは虫歯の原因菌であるミュータンス菌の活動を抑制する効果がある。※砂糖不使用のものを選ぶこと。 |
水 | 最も手軽で重要な口臭対策。こまめな水分補給は口内の乾燥を防ぎ、食べかすや細菌を洗い流す効果がある。 |
ヨーグルト(無糖) | 一部の乳酸菌には、口臭の原因となる悪玉菌の増殖を抑えたり、舌苔を減少させたりする効果が報告されている。腸内環境改善も期待できる。 |
バランスの取れた食事を心がけ、特定の食品に偏らないことが大切です。また、食事の際はよく噛んで唾液の分泌を促すことも意識しましょう。唾液には口内の汚れを洗い流したり、細菌の増殖を抑えたりする働きがあります。食後はできるだけ早く歯磨きやうがいを行い、食べかすがお口の中に残らないようにすることも重要です。
5. セルフケアを続けても歯列矯正中の口臭が改善しない場合
毎日丁寧に歯磨きをし、デンタルフロスやマウスウォッシュも使っているのに、歯列矯正中の口臭がなかなか改善しない…。そんな時は、セルフケアだけでは解決できない原因が隠れている可能性があります。自己判断で諦めず、専門家の力を借りることが重要です。この章では、セルフケアを続けても口臭が改善しない場合に考えられる原因と、取るべき具体的なステップについて解説します。
5.1 まずはかかりつけの矯正歯科医に相談しよう
最初に相談すべきは、あなたの歯列矯正を担当している歯科医師です。矯正治療の経過を最もよく理解しており、口臭の原因が矯正装置に関連するものなのか、それ以外の問題なのかを判断するための専門知識を持っています。
歯科医師に相談する際には、以下の情報をできるだけ具体的に伝えられるように準備しておくと、スムーズな診断につながります。
伝えるべき情報 | 具体例 |
---|---|
口臭が気になり始めた時期 | 矯正開始直後から、最近になってから、など |
口臭の種類や強さ | 生臭い、卵が腐ったような臭い、常に気になる、時々気になる、など |
口臭が強くなるタイミング | 朝起きた時、空腹時、食後、会話中、など |
現在行っているセルフケア | 歯磨きの回数・時間、使用している歯ブラシ・歯磨き粉、デンタルフロス・歯間ブラシ・タフトブラシ・マウスウォッシュ・舌クリーナーの使用有無と頻度、など |
生活習慣の変化 | 食生活の変化、ストレスの有無、睡眠時間、服用中の薬、など |
口臭以外の症状 | 歯茎の腫れ・出血、歯の痛み、口の渇き、舌の汚れ、鼻詰まり、胃の不快感、など |
これらの情報を元に、歯科医師は口内の状態を詳しくチェックし、矯正装置の調整や清掃指導の追加、あるいは他の原因の可能性を探っていきます。
5.2 考えられる矯正歯科以外の原因
セルフケアを徹底し、矯正歯科でのチェックでも特に問題が見当たらない場合、口臭の原因は歯列矯正とは直接関係のない、他の要因にある可能性も考えられます。口臭は体からのサインであることも少なくありません。
5.2.1 隠れた虫歯や歯周病の進行
矯正装置がついていると、どうしても歯ブラシが届きにくい箇所ができてしまいます。セルフケアでは気づかないうちに、装置の下や歯と歯の間で虫歯が進行していたり、歯周病が悪化していることがあります。特に、歯周ポケットが深くなると、そこに溜まった細菌が強い臭いを発することがあります。また、歯の根の先に膿が溜まる「根尖病巣(こんせんびょうそう)」も口臭の原因となり得ます。
5.2.2 舌苔が除去しきれていない可能性
舌の表面に付着する白い苔状の「舌苔(ぜったい)」は、口臭の大きな原因の一つです。舌クリーナーでケアしていても、舌の形状によっては奥の方の舌苔が十分に除去できていなかったり、誤ったケア方法で舌を傷つけてしまっている可能性も考えられます。歯科医院では、正しい舌ケアの方法について指導を受けることもできます。
5.2.3 全身的な問題が口臭に関わっている可能性
口臭の原因は、お口の中だけにあるとは限りません。以下のような全身的な問題が口臭を引き起こしている可能性も考慮する必要があります。
- 消化器系の不調:胃炎、逆流性食道炎、便秘などが原因で、体内で発生した臭い成分が血流に乗り、呼気として排出されることがあります。
- 呼吸器系の疾患:鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)、扁桃炎などがあると、鼻や喉の膿や細菌が原因で口臭が発生することがあります。
- 糖尿病などの代謝性疾患:糖尿病が進行すると、アセトン臭と呼ばれる甘酸っぱい特有の口臭が出ることがあります。
- 肝臓や腎臓の疾患:これらの臓器の機能が低下すると、体内の老廃物が分解・排泄されにくくなり、アンモニア臭などの口臭が発生することがあります。
- ストレスや疲労:過度なストレスや疲労は唾液の分泌を減少させ、口内細菌が増殖しやすくなるため、口臭の原因となることがあります。
5.2.4 服用している薬の影響
特定の薬(降圧剤、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬など)の副作用として、唾液の分泌量が減少することがあります。唾液が減ると口内が乾燥し、自浄作用が低下するため、細菌が繁殖しやすくなり口臭につながります。服用中の薬がある場合は、必ず歯科医師に伝えましょう。
5.3 専門医による検査と診断の重要性
セルフケアや矯正歯科での対応でも口臭が改善しない場合は、より専門的な検査を受けて原因を特定することが重要です。口臭の原因を客観的に評価するために、以下のような検査が行われることがあります。
- 口臭測定器による検査:呼気に含まれる揮発性硫黄化合物(VSC)などの口臭原因物質の濃度を測定し、口臭の有無や程度を客観的に評価します。
- レントゲンや歯科用CTによる精密検査:隠れた虫歯、歯周病の進行度、根尖病巣の有無などを詳細に確認します。
- 唾液検査:唾液の分泌量、緩衝能(酸を中和する力)、細菌の種類や量などを調べ、口内環境を評価します。
- 舌診:舌苔の量や色、付着状態を確認します。
- 官能検査:歯科医師や歯科衛生士が実際に臭いを嗅いで評価します。
これらの検査結果を踏まえ、原因が口の中にあるのか、あるいは全身的な問題が疑われるのかを判断します。必要に応じて、内科、耳鼻咽喉科、消化器科などの他の診療科との連携を提案されることもあります。
5.4 諦めずに原因を特定し適切な対処を
歯列矯正中の口臭がセルフケアで改善しない場合、その原因は多岐にわたります。「矯正しているから仕方ない」と諦めずに、まずはかかりつけの矯正歯科医に相談し、必要であれば専門的な検査を受けることが、解決への第一歩です。
口臭は、単に不快なだけでなく、体に何らかの問題が起きているサインである可能性もあります。原因を正確に特定し、それに応じた適切な治療や対策を行うことが、口臭の根本的な改善につながります。根気強く原因を探り、快適な矯正ライフを取り戻しましょう。
6. まとめ
歯列矯正中の口臭は、矯正装置周辺の磨き残しによるプラーク増加や、口が閉じにくくなることによる口内乾燥などが主な原因で起こりやすくなります。舌苔の付着や、元々あった虫歯・歯周病の悪化も関係します。口臭を抑えるためには、矯正装置に合わせた丁寧な歯磨き、歯間ブラシやデンタルフロス、タフトブラシといった補助清掃用具の活用、マウスウォッシュでの洗浄、舌ケア、こまめな水分補給が重要です。これらのセルフケアと歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアを組み合わせることが、口臭改善への近道となります。もしセルフケアを続けても口臭が改善しない場合は、他の原因も考えられるため、早めに歯科医師へ相談しましょう。
矯正治療のご相談をご希望の方は、下記のボタンよりお気軽にご予約ください。
この記事の監修者
尾立 卓弥(おだち たくや)
医療法人札幌矯正歯科 理事長
宮の沢エミル矯正歯科 院長
北海道札幌市の矯正専門クリニック「宮の沢エミル矯正歯科」院長。
日本矯正歯科学会 認定医。